魔王に甘いくちづけを【完】

歩いていると、小さかった灯が徐々に大きくなっていく。

傍まで辿り着くと、丸い玉のようなそれが目の前でゆらゆらと揺れた。


ユリアが指先でそっと触れると、それは小さな破裂音とともに弾けた。


まばゆいほどの光が辺り一面に広がり、ユリアの体を包み込む。




―――っん・・まぶしい・・・。


暗闇に慣れていたせいか、目が眩む。


痛いほどの眩しい光に耐えかね、ユリアは瞳を閉じた。









―――ふわりと揺れる感覚―――

徐々に感じる体のあたたかさ


意識が体に戻っていく―――








・・・ん・・誰かが私の頬を触ってる・・・。


優しい指が、髪を優しく梳いている。


何かが、額に乗ってる・・・。



あたたかくて、心地よくて、とても落ち着く。


このぬくもりにずっと、包まれていたい・・・。




「ユリア、目を覚ませ」



――っラヴルの声がする。

起きたほうがいいわ。


・・・ん・・・?・・動けない。

何かにがっちりと拘束されてるような。

そういえば、何だか二の腕が痛い。


それに、何かが指に絡みついてる。



僅かに身動ぎをすると、手の甲に、何か柔らかいものが押し付けられた。

チュッと音を立てて、それが離れていく。


フゥと吐かれた大きな息が手にかかった。


少し拘束が緩み、二の腕痛みが楽になった。




「ユリア、目覚めたか?―――聞こえてるのなら、目を開けろ。でないと、今すぐ襲うぞ」


「ぇ・・・?ま、待って」



急いで目を開けると、ラヴルに覗き込まれていた。

眉を寄せた厳しい表情。

間近で、漆黒の瞳が妖しく光っている。



とても近くて、怖い。


拘束されていると思ったのは当然で、膝の上に体を預け、逞しい腕にしっかりと抱えられていた。




「ユリア、ずっとうなされていたぞ。どれだけ私に心配掛けるんだ。さっきまで意識がどこかに飛んでいただろう。とても普通ではない。何があった?きちんと、包み隠さず話せ」