「ユリアも、こいつと仲良くなっておいた方がいいぞ。ほら、こうやって触ってみろ」
「な・・・仲良く・・・って言われても・・」
――この子と?こんな大きな子と?
見上げれば大きな瞳にじろっと睨まれ、口髭のような長い触角がユリアを調べるように、うにうにと体の周りを動き回っている。
「あぁ、そうだぞ。ずっとラヴル様の傍にいるなら当然だぞ。もう乗っけて貰っただろ?これから何度も背中に乗っかるんだ。なぁ、ヴィーラ?」
ライキがそう言うと、ヴィーラの鼻の穴が広がって、返事をするようにブワァッと大きく息を吹き出した。
正面にいたユリアの体が、その強風で大きくよろめき倒れそうになる。
その体をライキが素早く支え、ヴィーラの傍に誘導した。
「おっと・・・大丈夫かぁ?ほら、こっちに来て触ってみろよ。鼻の上、触ると喜ぶぞ」
ユリアが近づくと、ヴィーラの顔がゆっくりと地上近くに降りてきた。
恐る恐る言われた通りに鼻の上を撫でるユリア。
見た目よりも柔らかな手触りの毛並みがとても心地いい。
ふわふわの毛を梳くように指ですくと、くすぐったいのか、ヴィーラの鼻からブホブホと息が吹き出された。
強い風となった鼻息は、荒れた庭の木の枝を動かし、乱れ落ちた花弁を空に舞わせた。
「こいつ、笑ってるぞ。ユリア、気に入られたみたいだぞ。良かったなぁ!」
「本当?これ、わらって・・っ!」
言いながら振り返ろうとした瞬間に、ライキに背中をバンッと叩かれ、つんのめってヴィーラの鼻の上にボスンと倒れ込んでしまった。
柔らかな毛並の上に顔が埋まり、加えて背中を叩かれた衝撃のせいで息が止まり、とても苦しい。
もがきながら顔を上げるユリア。
呼吸は乱れ、瞳には涙が滲んでいる。
「・・・ぅっ・・イタタッ・・・もうっ・・酷いわ、ライキ」
「っ・・ごめんなぁ。俺、力持ちだもんな。これでも加減したんだけどなぁ・・・」
ライキが申し訳なさそうに頭を掻いて項垂れた。
ヴィーラの触角が華奢な背中を癒すようにさする仕草をした後、涙目になっているユリアの頭をそっと撫でた。
ユリアはその触角をそっと握って、ぎょろりと動く大きな瞳を見つめて微笑んだ。
「ありがとう・・ヴィーラは優しいのね?」
――こんなに優しいのに、あの日、最初に怖いと思ってごめんね――
ユリアはもう一度鼻の上に体を預け、頬を寄せた。
柔らかくてあたたかくて、とても居心地がいい。
暫くすると、肩にそっとライキの手が乗せられた。
振り向くと、緊張感たっぷりの顔でユリアを見ていた。
「どうかしたの?」
「ユリア、そろそろ屋敷の中に戻った方がいいぞ。うん、何か嫌な気配がする。気のせいだといいけど、この俺の勘、結構当たるんだ。ナーダの傍にいろ。ヴィーラ、お前はもう空に帰れ」
「な・・・仲良く・・・って言われても・・」
――この子と?こんな大きな子と?
見上げれば大きな瞳にじろっと睨まれ、口髭のような長い触角がユリアを調べるように、うにうにと体の周りを動き回っている。
「あぁ、そうだぞ。ずっとラヴル様の傍にいるなら当然だぞ。もう乗っけて貰っただろ?これから何度も背中に乗っかるんだ。なぁ、ヴィーラ?」
ライキがそう言うと、ヴィーラの鼻の穴が広がって、返事をするようにブワァッと大きく息を吹き出した。
正面にいたユリアの体が、その強風で大きくよろめき倒れそうになる。
その体をライキが素早く支え、ヴィーラの傍に誘導した。
「おっと・・・大丈夫かぁ?ほら、こっちに来て触ってみろよ。鼻の上、触ると喜ぶぞ」
ユリアが近づくと、ヴィーラの顔がゆっくりと地上近くに降りてきた。
恐る恐る言われた通りに鼻の上を撫でるユリア。
見た目よりも柔らかな手触りの毛並みがとても心地いい。
ふわふわの毛を梳くように指ですくと、くすぐったいのか、ヴィーラの鼻からブホブホと息が吹き出された。
強い風となった鼻息は、荒れた庭の木の枝を動かし、乱れ落ちた花弁を空に舞わせた。
「こいつ、笑ってるぞ。ユリア、気に入られたみたいだぞ。良かったなぁ!」
「本当?これ、わらって・・っ!」
言いながら振り返ろうとした瞬間に、ライキに背中をバンッと叩かれ、つんのめってヴィーラの鼻の上にボスンと倒れ込んでしまった。
柔らかな毛並の上に顔が埋まり、加えて背中を叩かれた衝撃のせいで息が止まり、とても苦しい。
もがきながら顔を上げるユリア。
呼吸は乱れ、瞳には涙が滲んでいる。
「・・・ぅっ・・イタタッ・・・もうっ・・酷いわ、ライキ」
「っ・・ごめんなぁ。俺、力持ちだもんな。これでも加減したんだけどなぁ・・・」
ライキが申し訳なさそうに頭を掻いて項垂れた。
ヴィーラの触角が華奢な背中を癒すようにさする仕草をした後、涙目になっているユリアの頭をそっと撫でた。
ユリアはその触角をそっと握って、ぎょろりと動く大きな瞳を見つめて微笑んだ。
「ありがとう・・ヴィーラは優しいのね?」
――こんなに優しいのに、あの日、最初に怖いと思ってごめんね――
ユリアはもう一度鼻の上に体を預け、頬を寄せた。
柔らかくてあたたかくて、とても居心地がいい。
暫くすると、肩にそっとライキの手が乗せられた。
振り向くと、緊張感たっぷりの顔でユリアを見ていた。
「どうかしたの?」
「ユリア、そろそろ屋敷の中に戻った方がいいぞ。うん、何か嫌な気配がする。気のせいだといいけど、この俺の勘、結構当たるんだ。ナーダの傍にいろ。ヴィーラ、お前はもう空に帰れ」


