「ようこそいらっしゃいました。ラヴル様―――此方へどうぞ」
馬車がゆるゆると停まったのは、こんもりとした森の前。
馬車から降りる時、無言で出されたラヴルの腕をユリアはじっと見つめた。
――私はこの腕に掴まるしかないんだわ・・・。
例え、この方の本質が冷酷で怖くても――
そっと腕に掴まると、ラヴルの瞳がふわっと緩んで口角が少し上がった。
漆黒の瞳は、そのままずっと見下ろしている。
馬車から降り立っても、ラヴルはちっとも動き出さない。
不思議に思って見上げると、バシッと目が合ってしまった。
「ユリア、機嫌は直ったか?」
「・・まだです」
ぽそっと呟いて、見透かすような瞳から逃れるように、プイッと横を向いた。
――散々脅しておいて、今更そんな優しげな顔しても騙されてあげないわ。
機嫌だって悪いまま、むっすりとした顔で過ごしてやるんだもの。
チラッと見上げると、まだ見ている。
何だか戸惑っているように見えるのは、きっと気のせいだわ。
暫くすると、ぼそっと呟く声が聞こえた。
「慣れるまで・・しょうがないな・・・」
うっそうと茂る木に囲まれた場所を、執事のような男がランプを持って、足元を照らしながら先に歩いていく。
案内されるまま暗い道を進んでいくと、前方に煌々と明かりのついた煌びやかな空間が見えてきた。
庭を明るくするためなのか、大きな屋敷の部屋全部に灯りがともされ、会場を囲むように生えている庭の木にも、沢山のランプが吊るされている。
それは、傍にある湖をも明るく照らしてて、よく見ると、ボートに乗って湖面に出てるカップルもいた。
長いテーブルの上にはオードブルが並べられ、既に集まっていた男女が、ワイングラスを傾けながらにこやかに談笑していた。
「ラヴル様!ようこそ―――お久しぶりです!」
グレーの髪の若い男の人が、にこやかに駆け寄ってきた。
ラヴルに向かって丁寧に頭を下げて挨拶した後、手を差し出した。
その手を一瞥して一瞬握った後、ラヴルはすぐに引っ込めた。
「まさか招待を受けて貰えるとは思ってませんでしたよ。そちらのお連れ様は?」
「ヤナジ、久しぶりだな。この娘はユリアだ。ルミナの屋敷に住まわせている」
「ラヴル様の屋敷に・・・?そうですか・・・。こんな娘、何処で見つけたんですか?」
ヤナジが珍しいものでも見るかのように、顎に指先を当てた姿勢で、頭の上からつま先までじっくり眺めている。
値踏みするようにじろじろ見られて、嫌な気分になってしまい、ユリアはその視線から逃れようと、ラヴルの方に体を寄せて腕にぎゅっと掴まった。
「―――へぇ、可愛いな・・」
馬車がゆるゆると停まったのは、こんもりとした森の前。
馬車から降りる時、無言で出されたラヴルの腕をユリアはじっと見つめた。
――私はこの腕に掴まるしかないんだわ・・・。
例え、この方の本質が冷酷で怖くても――
そっと腕に掴まると、ラヴルの瞳がふわっと緩んで口角が少し上がった。
漆黒の瞳は、そのままずっと見下ろしている。
馬車から降り立っても、ラヴルはちっとも動き出さない。
不思議に思って見上げると、バシッと目が合ってしまった。
「ユリア、機嫌は直ったか?」
「・・まだです」
ぽそっと呟いて、見透かすような瞳から逃れるように、プイッと横を向いた。
――散々脅しておいて、今更そんな優しげな顔しても騙されてあげないわ。
機嫌だって悪いまま、むっすりとした顔で過ごしてやるんだもの。
チラッと見上げると、まだ見ている。
何だか戸惑っているように見えるのは、きっと気のせいだわ。
暫くすると、ぼそっと呟く声が聞こえた。
「慣れるまで・・しょうがないな・・・」
うっそうと茂る木に囲まれた場所を、執事のような男がランプを持って、足元を照らしながら先に歩いていく。
案内されるまま暗い道を進んでいくと、前方に煌々と明かりのついた煌びやかな空間が見えてきた。
庭を明るくするためなのか、大きな屋敷の部屋全部に灯りがともされ、会場を囲むように生えている庭の木にも、沢山のランプが吊るされている。
それは、傍にある湖をも明るく照らしてて、よく見ると、ボートに乗って湖面に出てるカップルもいた。
長いテーブルの上にはオードブルが並べられ、既に集まっていた男女が、ワイングラスを傾けながらにこやかに談笑していた。
「ラヴル様!ようこそ―――お久しぶりです!」
グレーの髪の若い男の人が、にこやかに駆け寄ってきた。
ラヴルに向かって丁寧に頭を下げて挨拶した後、手を差し出した。
その手を一瞥して一瞬握った後、ラヴルはすぐに引っ込めた。
「まさか招待を受けて貰えるとは思ってませんでしたよ。そちらのお連れ様は?」
「ヤナジ、久しぶりだな。この娘はユリアだ。ルミナの屋敷に住まわせている」
「ラヴル様の屋敷に・・・?そうですか・・・。こんな娘、何処で見つけたんですか?」
ヤナジが珍しいものでも見るかのように、顎に指先を当てた姿勢で、頭の上からつま先までじっくり眺めている。
値踏みするようにじろじろ見られて、嫌な気分になってしまい、ユリアはその視線から逃れようと、ラヴルの方に体を寄せて腕にぎゅっと掴まった。
「―――へぇ、可愛いな・・」


