「そう仰らずに・・お願いで御座います」



大臣の目がちらちらとドアを見る。

恐らくあちら側に意を固めた若い娘がいるのだろう。

国のため、私のためと・・・。


ぎりりと歯噛みする。


このようなことは、もう――――


「有り難いことだが、美しい花は無暗に手折ってはならん。それに今は、妃と決めた者以外抱く気にならんし血もいらん。ゆえに、必要ない。見て分からんか、今は治療中だ。大臣は外にいる者を連れ帰り早々に執務に戻れ」


「ですが、セラヴィ様。ご存知の通り国の状況は今・・以前国作りをされてからどれほどの時が経ってるとお思いでしょうか」


「私も、大臣殿のご意見に賛成で御座います。貴方様のお体は活力ある若き血を必要としておりますぞ」


「ルルカ。貴様は、医師だろう。そんなことを言うとは―――」

「―――貴方様の!」



何時になく強い口調で我が言葉を遮った面前のルルカの瞳は、こちらをひたと見据え全く揺るぎがない。

こちらも瞳に威厳を込め見据えるが、後退りをするどころか逆に一歩近づいてきた。



「貴方様のお命は、この世界にとり最重要なもので御座いますゆえ。守られるならば、私は、冷酷にもなれるので御座います」


「ふん・・この、似非医師が」

「なんとでも―――」



ルルカは深深と頭を下げ、その後無言になり決して上げようとしない。

その命、どうとでもしろと言うように。



―――全く、どいつもこいつも。

何故そう命を投げ出そうとするのだ。

私は、まだ諦めてはおらんというのに――――


気付けば大臣までもがルルカの横に並び、同様に頭を下げていた。



「お願い致します。『耳』が警戒を強めておりますが、民の不安も徐々に高まってきております。勘の良い貴族方から問い合わせも多数舞い込んでおります。これ以上は誤魔化しきれません」


「ふむ・・・」



このような状況であるにかかわらず、御世を退けと誰も進言して来んのは、私が歴代最強と謂われるからなのか。

まだやれると、信じておるのだろうか。

後宮にいる彼女の存在も大きいのだろうが・・・・。


しかし―――――

この、忌々しくも弱き我が心臓は、いつまでもつ。



・・・我が手・・・震える指先・・・。


以前よりもさらに動きが鈍くなっている。

正直に言えば、感覚も薄い。

彼女の元に行き、香しい血の香りを嗅ぎ柔らかな気に触れれば少しは蘇るのだが・・・。