前もって言ってくれればそれなりの支度をしておくのに。
以前、ラヴルに夜着のまま小島に連れて行かれた事を思い出した。
あのときはナーダがショールを持ってきてくれたっけ。
「行くのは、前と違う場所だ」
「では、せめて上着を――」
「要らん。私がいる」
「・・は?」
―――・・・意味が分からない。
貴方は上着じゃないでしょう。
どうして吸血族の男の方は自分勝手な方が多いのかしら。
ラヴルも強引だけれど、あの方は私のご主人様。
ある程度は仕方がないと思うし私は従わなければいけないわ。
けれど、セラヴィは違うもの。
“我が妃”と勝手に言ってるだけの魔王という王様なだけだわ。
思い切り怖いお方だけれど、強く拒否しないと。
このまま勢いに負けて流されてはダメよ、しっかりしないと。
頑張らないと。
「こんな格好で外に出るのは嫌です。それに、靴も履いてないのです」
「私がいいと言っている。構わん」
だから。
どうしてそう考えるの?
噛みあわない会話に苛立って、あからさまにむっすりと膨れて見せれば、体を支えていた腕が離れた。
ベッドの上に戻されるかと思いきや、逆にふんわりと宙に浮き上がってしまい、ゆりかごのようにゆったりと左右に揺れはじめた。
自由自在に動かされ、さらに恐ろしい言葉も聞こえてくる。
「聞き分けのない妃だ。さて、どうするか」
「な、何を・・・下ろして下さい」
じたばたしてる私を見る漆黒の瞳は、実に愉快だとでも言いたげにきらりと輝いている。
「では観念しろ」
ストンと逞しい腕に収まり、毛布が動いて体をくるんと包み込む。
既に移動し始めた体を追いかけるようにして飛んできた靴が足にすっぽりとはまり、閉まっていたドアも自然に開かれ、何もかもが生き物のよう。
「ちょっと待って下さい。観念してません。この格好、貴方が良くても私が良くないんです!十分構うんです!」
私は普通に恥じらいを持ってます!
叫ぶ声も部屋の中と廊下に置き去りにされ、スタスタと強引に連れ出され瞬く間に例の闇の中へ入り込む。
こうなってしまえばもう諦めるしかない。
最初こそ恐れたこの道筋も、何回か経験すれば状況を観察する余裕が出る。
セラヴィの体があるべきところを見れば、黒き無の中に紅い双眸が光ってるだけで、やっぱり何も見えないし音もしない。
空気の流れも感じず、声を出しても闇に飲まれて耳には届かないだろう、まったき無。
呼吸が出来るのが不思議に思えるほどのところを、セラヴィは私を抱え悠々と歩いていた。
以前、ラヴルに夜着のまま小島に連れて行かれた事を思い出した。
あのときはナーダがショールを持ってきてくれたっけ。
「行くのは、前と違う場所だ」
「では、せめて上着を――」
「要らん。私がいる」
「・・は?」
―――・・・意味が分からない。
貴方は上着じゃないでしょう。
どうして吸血族の男の方は自分勝手な方が多いのかしら。
ラヴルも強引だけれど、あの方は私のご主人様。
ある程度は仕方がないと思うし私は従わなければいけないわ。
けれど、セラヴィは違うもの。
“我が妃”と勝手に言ってるだけの魔王という王様なだけだわ。
思い切り怖いお方だけれど、強く拒否しないと。
このまま勢いに負けて流されてはダメよ、しっかりしないと。
頑張らないと。
「こんな格好で外に出るのは嫌です。それに、靴も履いてないのです」
「私がいいと言っている。構わん」
だから。
どうしてそう考えるの?
噛みあわない会話に苛立って、あからさまにむっすりと膨れて見せれば、体を支えていた腕が離れた。
ベッドの上に戻されるかと思いきや、逆にふんわりと宙に浮き上がってしまい、ゆりかごのようにゆったりと左右に揺れはじめた。
自由自在に動かされ、さらに恐ろしい言葉も聞こえてくる。
「聞き分けのない妃だ。さて、どうするか」
「な、何を・・・下ろして下さい」
じたばたしてる私を見る漆黒の瞳は、実に愉快だとでも言いたげにきらりと輝いている。
「では観念しろ」
ストンと逞しい腕に収まり、毛布が動いて体をくるんと包み込む。
既に移動し始めた体を追いかけるようにして飛んできた靴が足にすっぽりとはまり、閉まっていたドアも自然に開かれ、何もかもが生き物のよう。
「ちょっと待って下さい。観念してません。この格好、貴方が良くても私が良くないんです!十分構うんです!」
私は普通に恥じらいを持ってます!
叫ぶ声も部屋の中と廊下に置き去りにされ、スタスタと強引に連れ出され瞬く間に例の闇の中へ入り込む。
こうなってしまえばもう諦めるしかない。
最初こそ恐れたこの道筋も、何回か経験すれば状況を観察する余裕が出る。
セラヴィの体があるべきところを見れば、黒き無の中に紅い双眸が光ってるだけで、やっぱり何も見えないし音もしない。
空気の流れも感じず、声を出しても闇に飲まれて耳には届かないだろう、まったき無。
呼吸が出来るのが不思議に思えるほどのところを、セラヴィは私を抱え悠々と歩いていた。


