魔王に甘いくちづけを【完】

何しろ総てにおいて強引なのだ、セラヴィは。

アリがあんな目にあったのも、私が死にそうになったのも、全部セラヴィのせいなんだから。


“セラヴィ様は、夜通し起きておられました”


なんてルルカに聞いて、ちょっと見直してしまったのは事実だけれど。

魔王がなんだって言うの。

妃になんて、絶対なってあげないんだから、決めつけないで欲しいわ。


ぷんぷんしながら改めて決意を固めてると、でもそういえば、とあることを思い出した。


あのとき、そうだったのかも・・・?



この窓を作ってくれた日―――



あの日、お願いしたのに何の返答ももらえないまま部屋に来てしまって、自分から訊ねたのにおかしいわと思い、もう一度機嫌を損ねないよう気遣いつつやんわりと要求した私に、セラヴィはこう言ったのだ。



「あの窓を・・・か。何故だ、開けなくともこの部屋の空気は澄むようにしてある。開ければ室温が下がる。貴女はか弱いのだぞ」


駄目だ、出来ん。と厳しくたしなめるような声色が出された。

ベッドにゆっくり転がされて、毛布を丁寧に掛けてくる顔つきは、とても渋かった。


「あ・・でも・・・寒くてもかまわないの。これでもかなり丈夫なんです。私は、外の空気の流れを感じたいのです。・・・駄目ですか」


やっぱり・・と呟きながら、しゅん・・としてると、顔を歪めながらも「・・・今、変える」と喉の奥で言って窓を作り替えてくれた。


「貴女の願いを叶えるのは今だけだ。後はない」


お礼を言いながら喜ぶ私に冷たい口調でそう言って、すぐにぱちんと指を鳴らして部屋から消えた。




・・・でも・・・これってどうなの・・・?


優しいのかそうでないのかよくわからないわ。

けれど、使用人や侍女は熱い信望を寄せているのも知ってる。

もしかしたら、とても良い王様なのかもしれない。



・・・カタ・・・



小さな羽音と物音を立てて、いつも通りにヒインコが窓に立ち寄った。

小さな頭をぴょこんと傾げて中を覗き込んでいる。

可愛い仕草に心が躍り、むっすりとした気分も一気に吹き飛んでしまう瞬間だ。


警戒しているのか暫くキョロキョロした後に、ちょんちょんと飛ぶように歩いて部屋に入ってきた。


完全に入ったところを見てから声をかける。

以前、入りきってないときに声を掛けたら驚いて逃げてしまったのだ。