魔王に甘いくちづけを【完】

モップを手にした使用人が窓を指差して言う。


「ユリア様、今日も窓を開けたままにしておきますか?」

「えぇ、お願いします」


ここ数日の間、朝に交わされる同じ会話。

彼は、でも寒いでしょう?と、いつも首を傾げて怪訝そうにするので今日は一言付け加えてみる。


「とても可愛らしいコが遊びに来るの。セラヴィには、内緒にしてね。追い払われては哀しいもの」


唇に人差し指を立てて内緒の仕草をして見せれば、承知致しました、内緒ですね?と言った使用人の顔がふわりとほころんだ。

失礼致します、と挨拶をして出ていった使用人の閉めるドアの音を聞いた後、体を起こして開けられた窓に目を向ける。


使用人が話してくれたことによれば、以前はこの部屋の窓は開けられる仕様になっていたらしい。

けれど、私を運び入れた日にセラヴィが何を思ったのか「む・・・」と声を漏らして仕様を変えてしまったそうで、かなり不便だったとぼやいていた。

再び開けられるようになったことにかなり喜んでいて、翌朝に開けて欲しいと頼んだら「おぉ~」と感動の声を上げた後にくるんと此方を向いて、満面に笑みを浮かべた嬉しげな顔でお礼を言われてしまった。


「貴女様が頼んでくださったのですね!有り難う御座います!」


何か勘違いをさせてしまったようだけれど、それ以来、無口で饒舌ではないけれど少しずつとつとつと話してくれるようになった。


先日はセラヴィのことを教えてくれた。

やけに真面目な表情だったから印象に残っている。



「ユリア様。セラヴィ王様は人の子である貴女様をかなり気遣っているので御座います。色々と、御気づきになりませんか?」



そう聞かれたので、ないわと即答したら、そうですかぁ、確かに伝わりづらいですねぇ・・と、笑っていた。


カクンと頭を垂れてかなり残念そうにしていたのを思い出して、今更ながらに考えてみる。


傍から見れば、かなり優しくされてるのかもしれない。



・・・そんな、まさかだわ。

セラヴィが・・・?

そんなこと、あったっけ―――?



思い返せば、かなり乱暴なことばかりされているもの。

人であることを気遣ってるのなら、あんな恐ろしいものを見せたり、したりしないわ。

いくら不思議な力があるからと言っても、節操がないんだもの。


考えれば考えるほどにむっすりとしてくる。