魔王に甘いくちづけを【完】

本当は、頭がぼぉっとして体は気だるく感じる。

声を出すたび息が苦しくなる。


けど、そんなことよりそれよりも。

ここに、私の横に、どうして貴方が寝ているの。



状況が今一つ掴めないままに顔を横に向ければ、ベッド周りは透ける素材の布がふんわりと取り囲んでいて、部屋には風が吹き込んでいるのかふわふわと柔らかに揺れていた。

そのはるか向こうの壁際に調度品が置かれてるのが見えて、寝ぼけた頭でも、いつもの部屋じゃないことが十分理解できた。

しかも、向こうにあるあの大きな窓。

あれはセラヴィの寝室で見たものにとても似ている。


今更ながらもハッとし、急いで胸元の毛布をしっかり握って、セラヴィの傍から離れるよう試みる。

けれど、思いのほか体は重く、ずりずり移動するどころか腕も動かすのがやっとの状態だった。


じたばたするだけに終わり、動くのを諦め息を乱しながら考える。


どうしてこんなに動けないのか。


えっと、これは・・・そういえば。

そう、昨夜は確か・・・・

セラヴィが突然部屋に来て、あんなこんなで・・血を―――


半ば夢心地の中で起きた出来事。

あれは紛れもなくほんとにあったことで、私はまだこの通りに生きていて。

どうしてあのまま放っておいてくれなかったの―――?


私がどんなにむっすりしようが睨もうが、セラヴィは悠々と隣に寝転んでいて頬に髪に触れてきた。

どうして直に触れることが出来るのかしら。

今まで出来なかったはずなのに。

おぼろげな記憶を辿ってみれば、名前を呼んでしまったことを思い出す。


「――っ、貴方、まさか」


そぉっと毛布の下を覗いてみると、意外にもきちんと夜着を身に着けていた。

まだ抱かれてはいないみたい?



「無茶をしたが、意識のない貴女を抱くほどに私は卑劣ではない」



今ならばいける、抱かれてみるか。と口の端を上げて覆い被さってきたので逃げようとするけれど、体が思うように動かない。


それでもなんとか体を起こそうと身をよじり懸命に腕を立てると、ふ・・と目の前が暗くなり、気付いたときにはクッションの海に沈んでいた。