魔王に甘いくちづけを【完】

―――クリスティナ―――


我が愛する者、黒髪の姫よ。


早く記憶を戻せ。


して、我を愛せ。


クリスティナ―――




誰・・・?

また、この名前・・・何度も耳にするわ。

もしかして、私のことなの?

貴方は私を知っているの?

でも、どうして、その名前なの。


だって、それは。


・・・それは・・・・・何だっけ・・・―――





あたたかなものが頬と額にひたひたと当たってる。

時に髪を整えるように触れる指先がとても気持ちいい。

優しく慈しむようで、温かくて大きくて甘えたくなる。



「・・・ん・・・誰・・・?」

「目覚めたか。我が声は聞こえるか。昨夜は乱暴なことをした。具合はどうだ。気分はいいか。食事は口にできるか。目をあけよ」



―――この声は、セラヴィのものだわ。

口調はゆっくりながらも矢継ぎ早に話し問いかけてくるそれは、随分と近くに感じる。

気のせいかしら―――


ゆっくり目を開ければ、真上にある漆黒の瞳とぶつかった。

その向こうには、見慣れない天蓋があるのが見える。



「っ・・・え・・?あの、ここは―――」

「黙れ。回答以外は受け付けん」


眉をしかめた怖い顔でそんなことを言われても、あんな矢継ぎ早に聞かれたら、寝ぼけた頭には最後の“目をあけろ”しか残ってない。

さっき感じた優しい手は、絶対に貴方じゃない。

そう決め付けてむっすりと見返す。


「どれから答えればいいのですか。というか、もう一度言って下さい」


強めの声を出したつもりが意外にも小さくて自分でも驚く。

何故か、お腹に力が入らないのだ。


真上にあるセラヴィの片眉がぴくんと上がったのが見える。

もしかして、怒ったのかも。



「む、一つでいい。具合はどうだと聞いた」

「具合―――?何ともないわ。いつもと、同じです」