「確かに、この刃は丸く危険はない。が、貴女のその柔らかな肌を傷付けるには十分なものだ」
――危険な物は排除する――
重低音の声が部屋の中に響き漆黒の瞳が紅く染まる。
部屋中の調度品が一斉に揺れてカタカタと小さな音を立て始めた。
恐怖を覚え、動くことも声を出すことも出来ずに固まっていると、しん・・と静まるのと同時に、今度は毛布がふわぁと飛んできてすぐ横の空間に留まった。
毛布の端っこがふわふわ上下に揺れる様は、まるで生き物のよう。
「ふむ・・少し遊びすぎた。時間が無くなる。毛布に巻かれるのと、自ら我が腕に身を任せるのと、どちらがいい」
決めよ、と微笑みの消えた迫力のある顔がじりじりと迫ってくる。
―――どうして毛布に巻かれなくちゃいけないのかしら。
どうしてこの方は、こんなに抱いて行きたがるのかしら。
どうして―――?
頭の中に沢山の疑問符を浮かべながら後退りを続けていると、かかとが壁にこつんと当たった。
迫りくるセラヴィのあとを追うように、毛布もふわりふわりとついてくる。
脇に避ければ、毛布に襲われてしまいそうな気がする。
「もう逃げられんぞ。抵抗は諦め身を任せよ。そんなに、私に抱かれるのが嫌か?」
「私は、自分で歩きたいのです」
強い意志を伝えるためにもじっと瞳を見つめる。
と、無言のままに素早く動いた両腕の中に閉じ込められ、つぃと顔が近づいた。
唇が迫ってくるのに気づいて、反射的にセラヴィの胸に手を置いて押し返そうとすると、急に脚が床から離れ、ぐらりと揺れた視界に天井が映った。
「・・・え?」
仰向けにふわりと浮く体は徐々に上昇して、気付けばセラヴィを見下ろすほどの高さになっていた。
こくんと喉を鳴らす。
このままどうなってしまうのかしら。
あまりに言うことをきかないから、そこの窓を開けて下に落とされてしまうのかも。
これから起こりそうなことがあれこれ考えついてしまい、体が恐怖に震える。
かなり下の方からセラヴィの声が聞こえてきて、高さを実感させられる。
「強情だ。実に愛らしく、まこと我が妃に相応しい」
ぷつん、と、見えない力が引いたのを感じると同時に体が急降下し始める。
天井がどんどん遠のいていき、こんな短い間なのに白フクロウさんに空から落とされた記憶が鮮明に蘇る。
あのときはラヴルがいたけれど――――
「――きゃぁぁ」
何か、何かに掴まらないと。
本能が、手と体を動かす。
鳥の翼のようにバタつかせると腕がしっかりとそびえ立つ何かに当たったので、すがる思いで懸命にしがみついた。
絡め易く安定するそれに腕をまわして、難を逃れたことに心底ほっとしながらドキドキする心臓と震える体をなんとか収めていると、耳の傍から重低音が聞こえてきた。
「ふ・・・散策に行くぞ」
――危険な物は排除する――
重低音の声が部屋の中に響き漆黒の瞳が紅く染まる。
部屋中の調度品が一斉に揺れてカタカタと小さな音を立て始めた。
恐怖を覚え、動くことも声を出すことも出来ずに固まっていると、しん・・と静まるのと同時に、今度は毛布がふわぁと飛んできてすぐ横の空間に留まった。
毛布の端っこがふわふわ上下に揺れる様は、まるで生き物のよう。
「ふむ・・少し遊びすぎた。時間が無くなる。毛布に巻かれるのと、自ら我が腕に身を任せるのと、どちらがいい」
決めよ、と微笑みの消えた迫力のある顔がじりじりと迫ってくる。
―――どうして毛布に巻かれなくちゃいけないのかしら。
どうしてこの方は、こんなに抱いて行きたがるのかしら。
どうして―――?
頭の中に沢山の疑問符を浮かべながら後退りを続けていると、かかとが壁にこつんと当たった。
迫りくるセラヴィのあとを追うように、毛布もふわりふわりとついてくる。
脇に避ければ、毛布に襲われてしまいそうな気がする。
「もう逃げられんぞ。抵抗は諦め身を任せよ。そんなに、私に抱かれるのが嫌か?」
「私は、自分で歩きたいのです」
強い意志を伝えるためにもじっと瞳を見つめる。
と、無言のままに素早く動いた両腕の中に閉じ込められ、つぃと顔が近づいた。
唇が迫ってくるのに気づいて、反射的にセラヴィの胸に手を置いて押し返そうとすると、急に脚が床から離れ、ぐらりと揺れた視界に天井が映った。
「・・・え?」
仰向けにふわりと浮く体は徐々に上昇して、気付けばセラヴィを見下ろすほどの高さになっていた。
こくんと喉を鳴らす。
このままどうなってしまうのかしら。
あまりに言うことをきかないから、そこの窓を開けて下に落とされてしまうのかも。
これから起こりそうなことがあれこれ考えついてしまい、体が恐怖に震える。
かなり下の方からセラヴィの声が聞こえてきて、高さを実感させられる。
「強情だ。実に愛らしく、まこと我が妃に相応しい」
ぷつん、と、見えない力が引いたのを感じると同時に体が急降下し始める。
天井がどんどん遠のいていき、こんな短い間なのに白フクロウさんに空から落とされた記憶が鮮明に蘇る。
あのときはラヴルがいたけれど――――
「――きゃぁぁ」
何か、何かに掴まらないと。
本能が、手と体を動かす。
鳥の翼のようにバタつかせると腕がしっかりとそびえ立つ何かに当たったので、すがる思いで懸命にしがみついた。
絡め易く安定するそれに腕をまわして、難を逃れたことに心底ほっとしながらドキドキする心臓と震える体をなんとか収めていると、耳の傍から重低音が聞こえてきた。
「ふ・・・散策に行くぞ」


