「王子様、お待ちしておりました」
「うむ」
建物の入口で畏まって待っていたのは、妙齢の綺麗な女性。
肩までのストレートなブラウンの髪をさらさらと揺らしながら挨拶をする。
「案内役のマーズと申します。此方にお進み下さい」
建物の中に一歩入れば、たくさんのヒトが働いていた。
何かを削るような音が響き、奥の方には炉のようなものが見える。
「王子様達には此方をご覧いただくよう主人より申し使っております」
と案内されたのは、ショーケースが沢山ならんだ部屋。
覗き込むと、色とりどりの綺麗な石が並んでる。
「全て標本として置いて御座います。全部、ここで採れた物なのですよ。どうぞ、手にとってご覧下さい」
「気に入った石が見つかれば、私に言え」
「気に入った物?」
「そうですわ。後程店へとご案内いたしますから・・・さぁどうぞ」
カチャカチャと鍵を開けてショーケースが開かれる。
握り拳大のものから小指の爪先のものまで様々に美しい石がずらりと並ぶ。
その中でも、ひときわ目を引く物があった。
あのとき妖精がくれた花の種に似た輝きを放つ石。
大きさも同じように思える。
胸がきゅんと締め付けられる。
あれから、あの種はどこに植えたのかしら。
花は咲いたのかしら。
もし咲いたのなら、どんな花だったのだろう。
私はそれを見るこなく城へと行ったはず。
国が滅んだ今も自然の営みは続いてるとバルは言った。
自然は素晴らしいと。
だったら、妖精の花も森のどこかで咲き続けてるかもしれない。
幼いころに暮らしたセリンドルの森。
思い出すのは苦しいことが多かったけれど、素敵なこともあるのだ。
「これ、触ってみてもいいですか?」
「えぇ、是非―――はい、どうぞ」
「ありがとう」
ユリアが黒い瞳を輝かせてマーズから所望の石を見せてもらってる頃。
ジークの部屋では、白い綿のような塊がふわふわのクッションの上でもぞもぞと動いていた。
ぱちっと目覚めたガラス玉の瞳。
額には大きなガーゼはすでになく、抜け落ちて乱れていた羽も整いつつある。
ぐっすりと眠って魔力の回復した白フクロウにとって、怪我などはすぐにふさがってしまう。
前王が崩御して早3年。
ご存命の内に命じられ、息子であるラヴル様に仕え始めたのは前王が亡くなる10年ほど前のこと。
“息子を守れ”との言葉は遺言のように心に沁み付いている。
尊敬していた唯一のお方の息子。
その方から託された最愛の者の身の安全。
今日は出掛けると言っていた。
こんな時に出掛けるなどどうかしていると思うが、この国では微細な動きを感じにくいと理解すれば仕方のないことだと思える。
あの方を守らなければならない、何としても。
ガラス玉の瞳を空に向け、白フクロウは何度も羽ばたきを繰り返した。
「うむ」
建物の入口で畏まって待っていたのは、妙齢の綺麗な女性。
肩までのストレートなブラウンの髪をさらさらと揺らしながら挨拶をする。
「案内役のマーズと申します。此方にお進み下さい」
建物の中に一歩入れば、たくさんのヒトが働いていた。
何かを削るような音が響き、奥の方には炉のようなものが見える。
「王子様達には此方をご覧いただくよう主人より申し使っております」
と案内されたのは、ショーケースが沢山ならんだ部屋。
覗き込むと、色とりどりの綺麗な石が並んでる。
「全て標本として置いて御座います。全部、ここで採れた物なのですよ。どうぞ、手にとってご覧下さい」
「気に入った石が見つかれば、私に言え」
「気に入った物?」
「そうですわ。後程店へとご案内いたしますから・・・さぁどうぞ」
カチャカチャと鍵を開けてショーケースが開かれる。
握り拳大のものから小指の爪先のものまで様々に美しい石がずらりと並ぶ。
その中でも、ひときわ目を引く物があった。
あのとき妖精がくれた花の種に似た輝きを放つ石。
大きさも同じように思える。
胸がきゅんと締め付けられる。
あれから、あの種はどこに植えたのかしら。
花は咲いたのかしら。
もし咲いたのなら、どんな花だったのだろう。
私はそれを見るこなく城へと行ったはず。
国が滅んだ今も自然の営みは続いてるとバルは言った。
自然は素晴らしいと。
だったら、妖精の花も森のどこかで咲き続けてるかもしれない。
幼いころに暮らしたセリンドルの森。
思い出すのは苦しいことが多かったけれど、素敵なこともあるのだ。
「これ、触ってみてもいいですか?」
「えぇ、是非―――はい、どうぞ」
「ありがとう」
ユリアが黒い瞳を輝かせてマーズから所望の石を見せてもらってる頃。
ジークの部屋では、白い綿のような塊がふわふわのクッションの上でもぞもぞと動いていた。
ぱちっと目覚めたガラス玉の瞳。
額には大きなガーゼはすでになく、抜け落ちて乱れていた羽も整いつつある。
ぐっすりと眠って魔力の回復した白フクロウにとって、怪我などはすぐにふさがってしまう。
前王が崩御して早3年。
ご存命の内に命じられ、息子であるラヴル様に仕え始めたのは前王が亡くなる10年ほど前のこと。
“息子を守れ”との言葉は遺言のように心に沁み付いている。
尊敬していた唯一のお方の息子。
その方から託された最愛の者の身の安全。
今日は出掛けると言っていた。
こんな時に出掛けるなどどうかしていると思うが、この国では微細な動きを感じにくいと理解すれば仕方のないことだと思える。
あの方を守らなければならない、何としても。
ガラス玉の瞳を空に向け、白フクロウは何度も羽ばたきを繰り返した。


