魔王に甘いくちづけを【完】

けれど、どんな技を使ったのか、きっちり巻かれた毛布が緩まる様子は全く無い。

もっと暴れてみるのもいいけれど、男性の前ではしたないことをしたくないのが乙女心だ。


「バル、自分で取れる気がしないわ。お願いします」


真っ直ぐに見つめてお願いしたら「困ったな」と言って頭を掻いた。


困ってるのは、貴方ではなくて私なのだけど――――

むっすりとして見上げると、何かを思いついたようで、素早く立ち上がった。



「分かった。・・・ちょっと出てくる。そのまま待ってろ」



そう言い置いて馬車を降りてどこかに行ってしまい、一人きりになる。

もし今馬車が大きく揺れ動いたら、顔から転ぶ自信がある。

余程のことが無い限りバルを残して動くことはないだろうけど、万が一のことを考えて、座ってるよりも横になってた方がまだ安全かもしれない。

そう結論付けて、椅子の上に寝転ぶべく行動に移そうとモゾモゾしていると、聞き覚えのある野太い声が近付いてきた。



「バル様に命じられてきたんだが、何かを取るとか取らんとか。全く何やら要領を得んのだが、急げと言われてきた。何があった―――?」

「ジーク。そんな大変なことではないの。この毛布を取るだけなのよ。なのに、バルったら出来ないって言うの」



おかしいでしょ?

そう言えば、目を見開いた後すぐに噴き出して声を立てて笑い始めた。

お腹を抱えて笑う様は爆笑に近い。



「ジーク?何がそんなに可笑しいの?お願い。笑ってないで取って」

「すまんすまん。そうかそうか。分かった、今取ってやる」


一人で納得してくっくっくと笑いながら、丁寧に毛布を取って畳む。

あっさりと取れたそれを見ながら「難しくないのに・・・?」と呟いてると、漸く笑いを収めたジークが説明らしきものをしてくれた。



「それが、バル様には難しいんだ。お前には分からんだろうが、男の性ってやつだ。許してやってくれ」



毛布を取るだけのことが、どうしてそうなるのか。

意味がよくわからず、男の、性?と聞き返せば、目の前の体は笑いながら肩を竦めた。

待っていてもこれ以上のことは教えてもらえそうになく、礼を言いながらもそういえばと思い出したことがあり、次いでと言ってはなんだけど、とジークに問いかけた。

朝は、慌ただしくて聞きそびれてしまった。


「白フクロウさんの様子は、どう?」


ジークがここにいるということは、思ってたよりも軽傷だと考えられるけれど・・・。