魔王に甘いくちづけを【完】

にこりと微笑んで見せると、眩しいほどのキラキラした笑顔が徐々に曇っていった。

探るような瞳が向けられる。



「ね、どうしたの?やっぱり本当に顔色悪いよね・・・ジークさんもいるし。体の具合が悪いの?大丈夫?寝てなくて平気?バルさんはお見舞いに来たの?」

「えっと・・・リリィ、落ち着いて聞いて欲しいの」


「・・・どうかしたの。もしかして、深刻なこと?・・・っ、そういえば。さっきから消毒薬の臭いがする。もしかしてまた変な人が来て誰か怪我したの?ユリアさんは怪我してない?」


「違うの、私は何ともないわ。そうではなくてね」



一から説明しようと言葉を探していると、バルの腕が目の前の空間に下りて来てリリィと遮断された。



「うむ、ちょっと待て。やはりお前は何も話さん方がいいな。これだと話しが長くややこしくなりそうだ。ここは、話し慣れた玄人に任せた方がいい。ジーク、頼む」



見守り態勢に入っていたジークは、急に振られてまごついたよう。

・・・バル様。話し慣れてるわけではありません、まぁこれに関すれば玄人ではありますが・・・とごにょごにょ呟きつつもリリィに穏やかな笑みを向けた。



「リリィ、こっちに来てくれ――――見せたいものと、頼みたいことがある」



手招きして呼ばれたリリィの表情が不安そうに歪む。

何となく察しているのだろうか「なぁに?ジークさん」と返事を返して歩いて行く足取りは、重い。


ゆっくり近づいて行った萌木色の小さな体がピタッと立ち止まり暫くの沈黙のあと、囁くような驚きの声が上がった。

信じられないものを見るように瞳が見開かれ、小さな手は横たわる体の上をぷるぷると震えながら彷徨う。




「やだっ・・・う・・そ、おじ・ぃ・・ま・・な・・んで?」




リリィは途切れがちに声を出し、両手で口を押さえた。

頬は見る間に青ざめていき、手だけでなく体も小刻みに震え出す。



「おい、大丈夫か?しっかりしろ・・・と言っても、無理だろうな」



無言でコクコクと頷きながらその場にへなへなと座り込むリリィ。

その顔を覗いたジークは入口の方を振り返り見た。

ダークブラウンの視線の先にいるいつも不機嫌な男は、壁にもたれながらもリリィの様子を真剣な面持ちでじっと見つめている。