魔王に甘いくちづけを【完】

ユリアがそんな風に思いを馳せてる頃、バルは旅の仲間とともに謁見の間にいて国王に報告をしていた。

そう、既に帰国しているのだ。

旅の汚れそのままの姿なれど、皆怪我もなく元気な様子。

国王の顔が安堵に綻び労いの言葉をかける。




「ご苦労だったな。いろいろ話を聞きたいのは山々だが、今は疲れを癒すのが先だ。今宵は労いの夜会を催すこととしよう。皆出席せよ。今は汚れを落としゆるりと休め」

「は、有り難き幸せに存じます」


国王が大臣に指示をする様を横目で見つつ退室をする。

と、隣から不機嫌そうな声が聞こえてきた。


「バル様。夜会なんて堅苦しいの、俺苦手なんすけど。出席しなくていいすか」

「あぁ・・・そうだったな・・・。だが、そんなものではないと思うぞ。立食の軽いものだろう。リリィも連れてくるといい。きっと喜ぶぞ」



リリィの名前を出せば、めんどくさげな表情がふと和らぐ。

心の中はもうリリィで満たされているのだろう。

この俺も――――――



「皆も各々想う者を連れてくるといい。夜会までまだ間がある。それまでゆっくり休め。ご苦労だった」


ではお言葉に従い失礼致します、と挨拶をし皆がそれぞれの部屋に下がっていく。




―――無事、帰って来た―――


瞳を閉じれば彼女の顔が真っ先に浮かぶ。

会いたい気持ちは逸るが、先ずは汚れを落とさねば。


「王子様、お帰りなさいませ」

「バル様、無事で何よりで御座います」



城宮に向かうべく廊下を歩けば、労いの言葉が方々から掛けられる。

そんな中、一段と響く高い声が後ろから追いかけるように投げられてきた。



「ちょっと、お待ちなさいな」


コツコツと急ぎ歩く足音も同時に響く。

城を開けた後に聞く、耳痛いお馴染みのもの。

すぐに分かる。これは、王妃のものだ。



「貴方、今お帰りになりましたの?」

「はい。只今戻りました。申し訳ありません。後程挨拶に伺うつもりでしたが―――」