魔王に甘いくちづけを【完】

「あ・・ぅ・・・うん、そうみたいだね。でも・・・今は気分が安定してるよ。あぁ、えっと・・・そう、何となく分かるの。最近気づいたんだけどね・・・私にはこういう才能があるみたいなんだ―――・・・あ、ユリアさんも抱っこしてみる?」



前から思っていたことだけれど、リリィは白フクロウさんに関わるときは少しだけ挙動不審になる。

聞いてないことも説明するように話すから何かありそうだとは思うけれど、追求はしないつもり。

きっと、話したくなくて内緒にしてるのだろうと思うから。



「でも―――私にも出来るかしら?」



今は大人しいけれど・・・。

昨日テーブルの上にいた時拒否されたことを思い出して不安になる。

もう少しで頬を叩かれるところだったもの。

見れば時々瞳を閉じて眠そうにしてるけれど、私の元にくれば翼を広げてばたばたと暴れるかもしれない。


「うん、今なら大丈夫だよ。腕を出してみて」

「―――こう?」


恐る恐る腕を差し出すと、リリィの小さな手に運ばれた白フクロウさんが、ふんわりと大人しく入ってきた。

思い切って少しきつめに抱っこしてみる。

肌触りはすべすべするけれど思っていたよりも堅い羽毛にちょっぴり驚いた。

何度も想像していたけれど、実際は違うものなのね・・・。


温かみがじんわりと伝わってきて心がほんわりとあたたまる。



「ね、大人しいでしょう?」

「そうね、前からこうしてみたかったの。ありがとうリリィ」



ふわふわもふもふのしっぽを触ることは断念せざるを得なかったけれど、思わぬ珍客で癒しを味わえることが出来た。

しかも、アリはこの子のことを私のペットだと言う。

それが未だに謎なのだけれど。





「ね、ユリアさん。アリ・スゥラルさんって・・・背が高くて、髪がサラサラで、上品な感じのヒトだよね?」


隣から興奮気味の声で尋ねられて視線を上げると、頬を紅潮させたリリィが瞳に映った。


「そうよ・・・もしかして、会うことが出来たの?」

「うん。今日すれ違ったの。みんなの噂どおりだったよ。すごぉくカッコ良かったぁ。歩き方も雰囲気も・・品があって・・・。みんなが騒ぐ理由がよく分かったよ。何度も振り返って見ちゃったもん」


「・・・リリィもそう思ったの?確かに優雅だけれど」


すべすべした肌触りのいい羽を指先でいじりながら、アリの姿を思い浮かべる。

あの身のこなしは、この国の貴族の出なのかしら。



「だってあんな素敵なヒトに会うの、二度目なんだもん」


「二度目、ということは・・・一度目はだぁれ?教えて、どんなお方なの?」



アリに似た雰囲気のお方と言えば・・・ケルヴェスが思い浮かぶけれどリリィは会ったことあるのかしら。



「それはねぇ、言えないんだぁ。・・・ひとつだけ教えられるのはね、初恋のヒトだよってことだけ。あとは、いくらユリアさんでも、これだけは内緒っ!」