魔王に甘いくちづけを【完】




「ね、それほんとなの?」

「えぇ、本当よ」



・・・正確には、起きたら部屋の中にいたんだけど。

リリィには、ラヴルに会ったことは言わない方がいいわよね。

ますます混乱しそうだもの・・・。



「知らない間に寝てしまってて、朝起きたらいたの。だから、多分・・・彼は一晩中いたと思うわ」

「え~っ。アリさんって、みんなにスゴい人気なんだよ!一日に3度は名前聞くもん。どんなヒト?やっぱり無口でカッコイイの?」



手を胸の前で組んで、にこにこと満面の笑みを浮かべて食い入るように此方を見ている。

・・・これは、詳しい話を期待してるのよね・・・?

リリィは一度会ってるけれど。彼は俯いてたし、姿を注視してたのはほんの少しだけだったもの、覚えてないのも無理はないわね。



―――無口・・・。


そうじゃなくて、無礼なんだけども。

それを言ってはいけないわよね。



―――カッコイイ・・・。


これも難しいわ。

何て言ったらいいのかしら・・・。



「ん~・・・そうねぇ・・・賢いお方だと思うわ。背が高くて、仕草も優美で、端正な顔立ちをしてる。そういうのを“カッコイイ”って言うのかしら?」

「そぉだよ。ユリアさん。そういうのがカッコイイの―――いいなぁ、私も会ってみたい」


「確か、バルが戻るまで、帰宅せずにこの城宮に留まるって聞いたわ。そのうち廊下でばったり会うかもよ?物腰が柔らかい方だからすぐに分かると思うわ」


「そぉなんだぁ・・・」



名前を出しただけで、リリィの顔がぱぁと明るくなって瞳がキラキラと輝いた。

噂を聞いてるだけのお方に、こんな風な反応を示すなんて、想像力の逞しさに感心するとともに、若いなぁって思ってしまう。



私も、この年ごろには、こんな風に過ごしていたのかしら・・・。

垣間見た記憶の映像から考えると、そんな自由があったとは思えないけれど。


こんな風に、友人と自由に男の方の話をして屈託なく笑いあう。

女の子には、そんな普通なことが一番幸せなのよね。

良かった、リリィにはここの生活が合ってるみたい・・・。



そのあとも興奮気味な質問攻めにあい、ポツリポツリと言えることだけ話すと、きゃぁきゃぁと悶えながら聞いていた。