それから数日が経ち、明るく柔らかな日差しが降り注ぐ穏やかな日のこと。
しんと静まったユリアの部屋で、羽ペンの音が時々響く。
テーブルの上には簡易試験と題された一枚の紙。
時々薄紅色の唇から呟きとも唸り声とも言えない声を漏らし、細く長い指が自らの黒髪をくるくると絡めては解き、もてあそぶ。
―――はぁ・・・難しい・・・。
ため息をつき、知らず知らずに寄せていた眉を元に戻して、最後の一問を残したところで問題を解く手を休めた。
気分転換代わりに、椅子に座って本をパラパラ捲る姿をそっと盗み見て様子を窺う。
―――今日も綺麗だわ・・・。
ヘカテの夜から数えて今日は４日目。
いつもシンプルな紺色のワンピースをぴしっと着て、いかにも出来る女性風だったマリーヌ講師。
飾り気もなくメイクもほとんどされてなくて、女性らしさが感じられなかったけど。
それがここ最近は明るい色のものを着て、薄いながらもメイクしてくるようになった。
昨日はアイスブルーで、今日はミントグリーンのワンピース。
シンプルさは変わらなくて、デザインはほぼ同じなんだけれど、与えられる印象が全く違う。
華やかになったというか、陰から陽へと大変身した。
綺麗目の色に合わせたアクセサリーも日替わりで着けてきてて、何だか日に日に美しくなっていくみたい。
女性って、恋をすると変わるものなんだわ、と改めて思う。
ちょっと、相手が、問題だけれど・・・。
あの時のことを思い出す。
ケルヴェスに操られていたあの出来事。
“忘れなさい”
言葉通り、マリーヌ講師はあの時のことは全く覚えてないみたいだった。
多分アリを倒したことも覚えていないわ。
「あのあと、お部屋に帰れましたか？」
試しに尋ねた私を、あのあと？と怪訝そうに見つめてきた。
貴女は術に縛られてたのよ、なんてとても言えなくて。
「間違えたわ。ごめんなさい、何でもないの」
手をぶんぶん振って笑って誤魔化しておいた。
暫くは首を傾げてたけれど・・・。
あのケルヴェスが、お相手なのよね、きっと。
また術に掛けられたりしないといいけれど・・・。
被害を受ける確率が高いのは私だもの。
気をつけていないと―――
再び手元の紙に視線を戻す。
残りの答えを書いて見直したあとマリーヌ講師に声をかけたら、眼鏡をくぃっと上げて目を細めた。
「まぁ早いですわね。それならば、これを―――・・・」
ガサゴソと紙袋の中を探して、一枚の紙を取り出した。
しんと静まったユリアの部屋で、羽ペンの音が時々響く。
テーブルの上には簡易試験と題された一枚の紙。
時々薄紅色の唇から呟きとも唸り声とも言えない声を漏らし、細く長い指が自らの黒髪をくるくると絡めては解き、もてあそぶ。
―――はぁ・・・難しい・・・。
ため息をつき、知らず知らずに寄せていた眉を元に戻して、最後の一問を残したところで問題を解く手を休めた。
気分転換代わりに、椅子に座って本をパラパラ捲る姿をそっと盗み見て様子を窺う。
―――今日も綺麗だわ・・・。
ヘカテの夜から数えて今日は４日目。
いつもシンプルな紺色のワンピースをぴしっと着て、いかにも出来る女性風だったマリーヌ講師。
飾り気もなくメイクもほとんどされてなくて、女性らしさが感じられなかったけど。
それがここ最近は明るい色のものを着て、薄いながらもメイクしてくるようになった。
昨日はアイスブルーで、今日はミントグリーンのワンピース。
シンプルさは変わらなくて、デザインはほぼ同じなんだけれど、与えられる印象が全く違う。
華やかになったというか、陰から陽へと大変身した。
綺麗目の色に合わせたアクセサリーも日替わりで着けてきてて、何だか日に日に美しくなっていくみたい。
女性って、恋をすると変わるものなんだわ、と改めて思う。
ちょっと、相手が、問題だけれど・・・。
あの時のことを思い出す。
ケルヴェスに操られていたあの出来事。
“忘れなさい”
言葉通り、マリーヌ講師はあの時のことは全く覚えてないみたいだった。
多分アリを倒したことも覚えていないわ。
「あのあと、お部屋に帰れましたか？」
試しに尋ねた私を、あのあと？と怪訝そうに見つめてきた。
貴女は術に縛られてたのよ、なんてとても言えなくて。
「間違えたわ。ごめんなさい、何でもないの」
手をぶんぶん振って笑って誤魔化しておいた。
暫くは首を傾げてたけれど・・・。
あのケルヴェスが、お相手なのよね、きっと。
また術に掛けられたりしないといいけれど・・・。
被害を受ける確率が高いのは私だもの。
気をつけていないと―――
再び手元の紙に視線を戻す。
残りの答えを書いて見直したあとマリーヌ講師に声をかけたら、眼鏡をくぃっと上げて目を細めた。
「まぁ早いですわね。それならば、これを―――・・・」
ガサゴソと紙袋の中を探して、一枚の紙を取り出した。
