魔王に甘いくちづけを【完】

「ほぅ、随分立派なお仕事をなさっているんですね。清廉な貴女に、実にぴったりだ」


ワイングラスをぴっと掲げてウィンクをしてきたので、苦笑いをしながら同じようにグラスを掲げた。

背筋がゾワゾワとするのを耐えつつグラスを空ける。


―――なんてキザなお方なのかしら。

こんな方は、私の好みではない―――


「ところで、そのお妃となるお方は―――」


横から声が出たので、もう一人の金髪青目の男性のほうを見る。

こちらは、前者と違って表情が豊かではない、冷静な雰囲気を纏っている。

こんな夜でも、青い瞳は浮ついていなくて落ち着きがある。

アリ様に少し似てるわ、と思いながら話を聞く。

どちらかと言えば、こちらの方が好みの男性だ。

向ける笑みも、自然と柔らかくなる。

ウェイターが差し出すトレイに空のグラスを返し、今度はワインを手に取った。

ゆらゆらと揺れる血のように真っ赤なワイン。

一口飲んで、熱を乗せた瞳で男性を見つめる。



「そうですわね、あの方はとても可愛らしくて―――・・・」


冷静なマリーヌ講師と冷静な男性、お互い無口なため、このカップルはあまり進展しそうにないが、ユリアの考えるところの素敵な男性との出会いには、とりあえず成功しているようだ。





そして、もう一つのパーティ会場。

こちらは若い雰囲気に溢れた場所。

若い子たちがお小遣いで参加できる軽いパーティ。

並べられてる食事も軽食が主で、飲み物もシャンパンではなくジュース。

地域の会館のような場所に作られた簡素な会場。


きゃぴきゃぴと騒ぎながら名前を書いて会場入りするのは、リリィを含めた5人の女の子のグループ。

会場の中は賑やかな音楽が流れている。

ざわざわと話声がしていて、笑い声もたくさん聞こえてくる。

それだけで、リリィの心はワクワクと浮き立っていた。



「みんな楽しそうだね」

「ね、来て良かったでしょう?」


早速ウェイターの服を着た男の子が飲み物を乗せたトレイを持って近付いてきた。


「飲み物をどうぞ」


男の子はリリィだけをじっと見つめてくるので、不思議に思いながらもにこっと笑いかけて橙色の飲み物を取った。


「ありがとう」と言うと、男の子はにこっと笑い返してくれた。


「リリィ、あっちに行こ」


仲間の一人にぐいぐいと手を引かれるので、飲み物を零さないように気をつけながらも奥のほうに進んでいく。