魔王に甘いくちづけを【完】

「出掛ける前に、どうしてもユリアさんに見て欲しかったんだぁ。だから、みんなに無理言ってここに寄ったの」


ふと、窓の外を見たリリィがきょろきょろと頭を動かした。


「ユリアさん、白フクロウがいないけど、どこかに・・・あ・・あれ?・・・やっぱり・・部屋の中に、入れたんだね・・・」



天蓋の上の白い姿が目に入ったよう。

天井近い部分は光が届かなくて少し暗い。

時々動くガラス玉の瞳だけがギラリと光ってて、ちょっぴり恐く見える。



「そうなの。入れたと言うか、窓を開けてたら勝手に入ってきたの。あ、リリィは鳥さんが苦手だったわよね、ごめんなさい・・・そのうち、出ていくと思うわ」


・・・朝になったら、もう一度窓を開けてみよう。

きっと偶然に入り込んでしまっただけだと思うし、白フクロウさんもいつまでも部屋の中に居られるはずがないもの。

食事とかあるだろうし・・・・。



「ぴぃぃっ、ぴぃっ」


白フクロウさんが急に声を出したのでそちらを見ると、白い翼を広げてパタパタと動かしながらリリィの方をじっと見ていた。



「ぁ、違うの。苦手っていうわけじゃないの。ただ―――」

『リリィ、まだぁ?』


ドアの向こうから一斉に発せられたような数人の女の子の声と、コンコンと催促するノックの音がした。

ハッと息を飲んで首をすくめるリリィ。


「・・いっけない。長く居すぎちゃった。・・じゃぁ、私、パーティ行ってくるね。小瓶はちゃんとポケットに入ってるから、心配しないでっ。行ってきま~す」

「えぇ、行ってらっしゃい。楽しんできてね」



可愛く手を振りながら、バタバタと出ていったのを見送って一息つく。

『ごめ~ん』『もう、遅いよぉ』閉まっていくドアの向こうから明るい声が聞こえてくる。

それと、もうひとつ。

壁の方から怒りを含んだような低い声が聞こえてきた。



「貴女様に一つ、申し上げておきますが。私は、灯りの点け方くらい存じております」

「―――はい?」


むっすりと俯いたままの顔をまじまじと見つめる。

だったら、どうして点けなかったの?という質問はぐっと飲み込む。

この方とお話をすると、碌なことにならないのが身にしみて分かった。

やっぱり私にはどうにも理解できない。

出ていって貰えないのなら、無視するのが一番の対処法だと学習した。

早く、今夜が過ぎればいいのに―――



窓の外に目を向ける。

煌々と輝くまんまるな月が、空に浮かんでる。

そろそろお食事が運ばれてくる時間。


そういえば、マリーヌ講師もパーティに出掛けてる頃よね。

お洒落していたマリーヌ講師、とても綺麗だったもの。

素敵な出会いが訪れてるといいな・・・。