魔王に甘いくちづけを【完】

「ありがとう、ユリアさんっ。私もね、ビックリしてるの。こんなのも似合うんだぁって思って。こんなカッコ初めてなんだもん―――――もし、ザキが見たら、褒めてくれるかなぁ・・・」


嬉しそうだけど、ちょっぴり切なげな色が声に混ざる。

元気そうにしてるけど、ザキがいないと寂しいみたい。

もし、ザキがここにいたらどんな顔をするのかしら。

照れた顔を想像してみる。

けれど、不機嫌そうな顔が赤くなるだけで、どうやっても笑ってくれない。

笑顔は、リリィしか見たことないわね。



「もちろんよ。―――でもね、見せない方が正解かもしれないわよ?」

「・・・へ?」

くるん、くるん、踊るように回ってる体がピタッと止まった。


「行くなって、不機嫌そうに言われちゃうかもよ?」

「え・・・どうして?やっぱり・・変かな」


自らの体を見下ろすリリィの声に、元気が無くなっていく。


「あぁ、違うわ。そう言う意味じゃなくて。あまりに素敵だから、心配になっちゃうのよ。他の男性に取られるんじゃないかって」

「え~、やだぁ。そんなことないのに・・・―――じゃ、ザキがこの場にいなくて正解なんだ」

「そうよ。もし、居たら楽しみが消えちゃうところだったわ」


もう一度、良かったわね?と言ってあげると、リリィの表情に明るさが戻った。

頬を染めてフフフと嬉しそうに笑う。


「あ―――――今から行くのでしょう?みんなは?」

「部屋の外で待ってる・・・でね、面白いんだぁ。そこのボブさんがね、顔を紅くしてずぅっと上向いてるの。ここに入れて貰う時もね、何度も名前呼んでるのに、全然返事してくれなかったんだよ。だからお話が出来なくて、ドアを開けてもらえるまで、随分時間がかかっちゃった。すごく苦労したんだよ?今もきっと上向いたままだよ」


みんながいるもん、くすくすと笑いながらドアを指差す。


「ドアの向こうの大きな方は、ボブさんっていうのね?初めてお名前を聞いたわ」

「うん。でも本当の名前じゃないよ。私が付けたあだ名なの。だって、聞いても教えてくれなかったんだもん」


ぴったりのあだ名でしょ?と言って同意を求めてきたので受け合って笑う。


「そうね、そんな感じね」


本人はあだ名で呼ばれることに、納得してるのかしら。

否定も肯定もせず大人しくしてるなんて、厳ついお顔に似合わず結構優しいお方なのかも。

今も、着飾った可愛い子たちがたくさん目の前にいて、照れてるのよね、きっと。


そういえば、さっきも顔が赤かったっけ。


壁にもたれてるあの方とは比べ物にならないくらい優しくて純な方だわ。

すっかりなじんできた大きな背中の好感度が、一気に上がった。