魔王に甘いくちづけを【完】

元気に発せられた声に、次第に残念そうな色がのせられていった。

漸く解放されたこととリリィの声に心の底から安堵して、力が入ってた肩がすとんと下におりた。


――――私、こんなに緊張してたのね・・・。

ふぅ・・と息を吐いて、壁から体を離してリリィに近づく。


「・・・リリィ。室長は午後からお休みを取ったらしいの。で、代わりにその方がいるんだけど、灯りを点けられないらしいの」


え~っ!?と盛大に驚きの声を上げて、まじまじとアリを見つめるリリィ。


「あなた、灯りを点けられないの?」


アリは無言を貫いて、瞳を閉じて壁にもたれている。

例のごとく、リリィにも一瞥もくれない。


「じゃぁ、他の人に頼まなくちゃ。待ってて、ユリアさん」


くるんと振り返ったリリィの背中に、白い肌が見える。

襟ぐりが深く開いた大人っぽい服を着てるみたい。

小さな手がドアの向こうにある大きな背中をぱしぱしと叩いた。


「ね、ボブさん灯り点けられる?私がしたいけど禁止されてるから。お願い・・・」


頼み事が上手なリリィの、甘くてかわいい声。

大きな体がのっそりと動いて部屋の中を覗き見た。


「―――あぁ、暗いな」


呟くような返事をして部屋の中に入ってきた。

顔が月の灯りに照らされる。久しぶりに見るけれど、相変わらず厳つくて怖いお顔。

鋭い瞳がじろりと部屋の中を見廻して、壁にもたれて立っているアリの姿を捉えると、無言のままくるんと首をひねった。

部屋の中をどすどすと歩きまわり、8つある壁の灯りを順番に点して、ありがとうボブさん、というリリィの声に頷いて、頭を下げて部屋を出ていった。


灯りが点くことが、こんなに嬉しく思うのは初めてだわ。



「じゃぁ――改めて。ね、ユリアさん見て見てっ。どう?」



明るくなった中で、照れたようにエヘヘと笑いながら、早速くるりと廻って見せるリリィ。

綺麗な黄緑色で、体の線が出るシンプルな服。

丸い胸にくびれたウェスト、それに、きゅっとしまったおしり。

小柄だけどスタイルの良いリリィ。

それが存分に生かされていてメイクもしてて、いつもより格段に大人っぽい。

髪色と合わせるとまるで一輪のお花のように見える。



「これね、みんなに借りたの。アクセサリーも全部。どうかなぁ、似合う?」

「えぇ、見違えちゃったわ。素敵、とっても綺麗よ。ザキにも見せてあげたいわ」