魔王に甘いくちづけを【完】

「ちょ・・ま、待って。自分で―――」


ちょっと抵抗したけれど、さすが侍女見習いと言うべきか。

日頃の練習の成果が発揮されて、あっという間に脱がされて着替えさせられた。



「ほらぁ、やっぱり綺麗じゃない」

「これなら男性陣イチコロだよ」

「モテモテ間違いなしね」


と嬉しげにキャッキャッと騒ぎ立ててる。

自分でも姿見を見て驚く。


・・・私って、こんなのも似合うんだぁ・・・。

ザキに見せたら、なんて言うかな・・・。


鏡の中に、大人っぽくなった自分の姿と、代わる代わるに覗き込む仲間の笑顔が映る。



「たまの機会なんだもの、冒険しなくちゃ、ね?」

「ねって・・・みんなも、こういうの着るの?」

「当然よぉ」



一斉に答えが返ってきた。

髪もセットしてあげるから、メイクもしてあげる、と口々に言われて。

じゃぁ、コレ借りるね、と言ったところで、チリチリチリ・・・ンと休憩時間の終わりを告げる時計のベルが鳴った。

大変!と言ってみんながにわかに騒ぎ始める。

今からの講義は、時間にうるさい講師のもの。

遅れると反省文を書かされてしまう。



「リリィ、先生には具合が悪いから遅れるって、適当に言っとくね」

「あ、ゴメン―――なるべく急ぐからっ」



バタバタと急いで駈けていくみんなの背中に声を投げて、急いで着替える。

腰のあたりに手をやってふと思った。


―――コレだと、ジークさんにもらった瓶が入れられないよね・・・?

せめてもう少し小さな瓶じゃないと―――


ジークにもらった、スプレー式の瓶を手に持って眺める。



―――どう考えても大きすぎる。

コレって確か“狼を撃退する薬”って言ってたよね。

“危ないと思った時に、吹きつけりゃ相手はイチコロだ”って。

パーティで狼に出会う確率は低いだろうし、こんなに大きな瓶じゃなくてもいいよね・・・?

着ると決めた服は体の線が出るデザインで、ポケットが膨らんでるとどうにもカッコ悪い。


“絶対肌身離さず持ってろ。いいか、ポケットの中だ”


ジークに言われた言葉を思い出して苦笑しながらも、従わなくちゃと思う。

もしも何かがあって、持ってろって言っただろう!って、後で叱られるのは嫌だもん。


がさごそと引き出しを漁って、小さな瓶二つを探しだした。

中身を小分けにして、一つはポケットに、もう一つは手に持って部屋を出た。

一つは、最初に出会った女の人にあげようと決めたのだ。



「こんなにたくさん要らないもんね」



急ぎ足で歩いていると、廊下の向こうに、きびきびと歩く女の人の姿が見えた。

いつもシンプルな服を着てて、きりりっとした雰囲気のカッコイイ女の人。


珍しいわ、今日はお洒落してる。



「マリーヌ講師!」


声をかけるとぱっと振り返ったので、急いで駆け寄って瓶を差し出した。


「あの、コレ――――」


マリーヌ講師が眼鏡をくいっと上げた。