魔王に甘いくちづけを【完】

ユリアがお茶菓子を摘まみながら、うっとりと瞳を潤ませてる侍女の“アリ様の素敵さ”という、講義のような止まらないお喋りを苦笑しつつも聞いてる頃。

リリィは見習い仲間と一緒にいて、ずらりと並んだ服を前にして頭を悩ませていた。


生まれてこの方ずぅっとお爺さまと暮らしていたから、こんな風に同年代の子たちと話したり、出掛ける約束をしたりというのは初めてで、嬉しいけどちょっぴり戸惑いも感じ始めていた。

ふわふわとした気持ちで出掛けるのを楽しみにしていたけれど、ザキ以外の人と外出するのは初体験。

ザキは何を着ていても優しい瞳で見てくれるけれど、不特定多数の人が集まるパーティではそうはいかない。

場違いな服だと恥をかいてしまいかねない。

ユリアから許可を貰った後、ハタと気付いてしまったのだ。



“もしかして、持ってる服だと場違いなのかも・・・”


パーティという催し物に出席するのは初めてで、みんながどんな装いをして来るのか分からない。

今更買いに出かける時間もないし。

ジークやバルに買ってもらった服はたくさんあるけど、それでいいのかと不安に思っていたのだ。






「この色が良いんじゃない?」

「そうよね、リリィの髪の色にとても似合うと思うわ」


口々にそう言って何本かの指が一着の服を指差す。


「そうかなぁ・・・」

「そうよ、着てみるといいわ。きっと一輪のお花のようになるはずよ」

「そうよ、似合うわよ」

一気に楽しげな声が広がる。



ここは見習い侍女の部屋。

今は見習いたちの休み時間。


ランチの時間にクローゼットの中身を思い浮かべながら


「どうしようかなぁ、何を着ていけばいいのかなぁ。イマイチ分かんないよ」

ポツリと呟いたら


「リリィは初めてだもんね、大丈夫、私が選んであげる!」

「私も!」


と嬉々として何本もの手が上げられたのだ。

中には「私が持ってる服、リリィに似合いそうだから貸してあげてもいいよ」と言いだす子も現れて。


今リリィの前には、自前のもふくめて8着位の服がハンガーに吊るされている。

どの服も綺麗目の色合いで、普段着よりちょっぴり煌びやか。

その中で、みんながイチオシで薦めてくるのは、明るい黄緑色のもの。

確かに綺麗だけど、着たことがない色。



似合うのかな・・・。



ぴらりと体に当てて姿見をみる。

何だかデコルテが開きすぎてる気がする。

コレだと谷間が見えちゃいそう。

目くらましのアクセサリーがないと―――



「ね、コレ、大人っぽ過ぎない?」

「何言ってるのよ。リリィはスタイルが良いんだから。それくらいぴったりお似合いよ?」

「ネックレス貸してあげるから、ね?コレにしたら良いわ」


ほら、着てみせてよ、と言って方々から腕が伸びて来た。