魔王に甘いくちづけを【完】

―――パーティ。

ジークに聞くと、きっとダメだって言うわよね。

マリーヌ講師のような、お見合いパーティみたいなものかしら?

でも、リリィたちは若いし、男女の出会いとか、繁殖がどうのこうのな目的じゃないとは、思うけど・・・。

そんなのはリリィには必要ないし―――



ちらりと表情を窺う。

目がきらきらしてて頬が少し上気してて、楽しみでワクワクしてる感じが伝わってくる。



リリィも魔者の内の一人だもの。

月の影響が多少あるだろうけど、この様子は・・・要するに、行きたいのよね・・・?

狼さんたちに狙われる危険性は高まるけれど、だからと言って閉じ込めるのもどうかと思うわ。



不機嫌そうなザキと父親のように心配するジークの顔が、どーんと思い浮かぶ。

二人の瞳が『絶対許可するな』と圧力をかけてくる。

苦笑しつつもそれをなんとか頭の中から追い出して、リリィの顔を見つめる。


不安げに言葉を待ってる、とても可愛くて大好きなリリィ。

貴女も少しは楽しみたいものね?

危険を自分の力で退けるのも大切なことだわ。

友人たちもいることだし・・・。




「・・・行ってもいいわ。ただし、絶対にあの子たちと離れちゃだめよ?それと、その液を持ってることを忘れないこと。変な男の人が近寄って来たら、すぐに逃げること。それを守れるなら、今夜、楽しんでくるといいわ」


「本当!?ありがとう!ユリアさんっ。絶対約束するわ。あ・・・でも、ごめんなさい。ユリアさんは・・・」



あからさまに喜んでしまったことに罪悪感を覚えたのか、また声が小さくなっていく。そんなに気遣わなくてもいいのに。



「私のことは気にしないでいいのよ。いいから、そんな顔しないで。思い切り楽しんできて、私にお話を聞かせて。リリィとのおしゃべりが私の楽しみなの。ね?」


「分かったわ。じゃぁ、ユリアさんの分まで楽しんでくるね。パーティ、行ってくるわ」



ぱぁと花が咲いたような笑顔になる。

赤毛がふんわりと揺れて、ドアに向かう足取りも軽く、何を着ていこうかなぁ、と嬉しげにぶつぶつ言っている。

出ていく小さな背中に手を振りながら声をかけた。



「―――いってらっしゃい、リリィ・・・」