魔王に甘いくちづけを【完】

窓の外の白フクロウが一声鳴いて、バサバサバサと飛び立つ音が聞こえてくる。

リリィの瞳にその姿が映り、追いかけるようにすーと動く。

その瞳をユリアに戻しながらスカートのポケットに手を入れた。



「ぁ・・あのね、ユリアさん。コレ貰った?」



ポケットから取り出したのは、ジーク特製の狼撃退液。

その大きさを見て苦笑してしまった。

小さなてのひらの中に収まらないほど大きくて、今朝貰った小瓶の2倍はある。

持ち歩くには不便そう。


・・・ジークったら、余程心配なのね・・・

ジークの心が伝わってきて心がほわんと温かくなる。

本当に、お父さんみたい。




「あのね、今夜っていうか、今日一日はすごく危ないんだって。ジークさんが真剣な顔で、妙な男が近づいてきたら、コレを拭きつけろって言ったの。狼がどうとかって言ってて、実はよく分かんないんだけど。とにかく持ち歩けって。たくさんあるからあの子たちに分けてあげようとしたら、要らないって断られちゃった。ユリアさんが持ってなかったら、あげようと思って」



―――やっぱり狼の意味、よく分かってないのね。

疲れきったジークの姿が容易に想像できる。

でも、ジーク。

貴方の頑張りのお陰で、危険ということだけは、きっちりと伝わってるみたいよ―――



「大丈夫、持ってるわ。ほら・・・」


ポケットの中から取り出して見せると、ほっとした笑顔を見せた。



「そっかぁ、良かった・・・さすがジークさん、分かってる。あ、でね。ユリアさんに、いっこ相談があるの・・・」



言いづらいのか、声が尻つぼみに小さくなっていく。

話しやすくするために、なるべく優しい笑顔を向けた。



「私に相談?なぁに?」

「・・・私ね、あの子たちに今夜のパーティに誘われちゃったの・・・。ユリアさんを一人にしちゃうんだけど・・・。同じ年くらいの子たちが集まるんだって。一人でいると危ないけど、パーティならたくさん人がいるから危なくないよ。新しい友達も出来るし、行こうよ、って言われたの。・・・・なんか楽しいらしくて、行ってみたいんだけど・・・。どうかな?ね、ダメだと思う?」


「う~ん、そうね・・・」



気遣いながら遠慮がちに話すリリィの表情は、それでもキラキラとしてて眩しい。

この年頃の女の子の、普通の感情が表れる。

恋と友情と仕事。

辛いこともあるだろうけど、きっと毎日が楽しいのだろう。

その自由さが、ちょっぴり羨ましいと思う。