「来い、ヴィーラ」
ラヴルが呼び声を発すると、遠くの方から鳥の羽が羽ばたくような音が聞こえてきた。
何処から来るのか姿は見えないけど、その音はどんどん近付いてくる。
「何の音ですか?」
「・・・ヴィーラの飛ぶ音だ。あまり動くな。落ちるぞ?」
「・・・はい」
じっとしていると、上から大きな翼を持った生き物が悠然と降りてきた。
バッサバッサと音を立てて目の前で浮遊している。
その大きな目玉がギョロリと動き、ユリアの顔をじろじろと見る。
口の端には大きな牙がニョキっと出ていた。
――ん、これって何かしら・・・顔が怖い・・・・まさか・・・まさか、これに乗って出掛けるの?
不安定に上下するヴィーラの体。
ユリアの顔がスーッと青ざめていく。
堪らずにラヴルの肩にしがみついて、頬を胸に埋めて瞳をギュッと閉じた。
「怖いのか?大丈夫だ、ヴィーラはユリアを落としはしない」
「こ・・・怖くなんて・・・怖くなんて、ありません。ただ、びっくりしているだけです」
「そうか、怖くない、か。ならば自分で乗って貰おうかな?」
「・・・?待って・・あの・・・え―――!?」
ラヴルは楽しげな声を出し、抱き抱えていた腕をふっと緩めた。
体がスルリと離れ、僅かなスペースにすとんと下ろされるユリア。
バランスを崩した体はふわりと揺れ、柵の外の闇が近付いてくる。
あまりの恐怖に声も出ない。
―――落ちる!と思った瞬間に、ラヴルの腕が目の前に現れてがっしりと体を支えた。
それをぎゅっと掴んでしがみつく。
すると、何がおかしいのか、クスクスと笑う声が聞こえてきた。
「冗談だ。・・・ユリアは面白いな」
―――冗談って、そんな・・・ちっとも面白くない。
私は、こんなに、こんなに、怖かったのに。
涙を浮かべるユリアを見て、しっかり掴まってろ、と優しく言うと、ラヴルは震える体をしっかりと抱え込み、まるで地上にいる馬に乗るかのように、いとも簡単に、ヴィーラの背中にひらりと乗った。
「行け、ヴィーラ」
さっき味わった恐怖が消えずぎゅっと目を瞑るユリア。
暫くすると悠然と羽を動かす音が聞こえ、ふわふわとした浮遊感が体に伝わってきた。
その感覚も慣れなくて怖くて、必死にしがみついてしまう。
「ユリア、そう怖がるな。大丈夫だ、ほら、目を開けろ」
震えながらも恐る恐る目を開けてみると、眼下に光りの海が広がっていた。
それは、部屋の窓から見たあの水面で、ヴィーラが起こす風でさざ波が起こり、月明かりに照らされてキラキラと輝いていた。
ラヴルにしがみついたまま後ろを見てみると、さっきまでいた場所が見えた。
山の上に建てられているそれは、下の方にある家と比べてはるかに大きく見える。
遠くから見ても、広大な屋敷だということが分かる。
――あれは屋敷っていうよりも、別の何かだわ・・・。
あんなに大きかったの?
ラヴルって一体何者なの・・・?
ユリアは前を見据える漆黒の瞳を不思議そうに見つめた。
「これが、これから私とともに住む街だ。ユリアの物と言ってもいい。よく見ておけ」
ヴィーラが方向を変えて、後ろの景色を見せるようにその場に浮遊する。
広大な屋敷が建つ山。その裾野から海辺に向かって徐々に家の灯りが増えている。
港のような所には特に家が多いのか、灯りがひと塊りになって煌々と輝いていた。
「あの、見せたいものって、これですか?」
ラヴルが呼び声を発すると、遠くの方から鳥の羽が羽ばたくような音が聞こえてきた。
何処から来るのか姿は見えないけど、その音はどんどん近付いてくる。
「何の音ですか?」
「・・・ヴィーラの飛ぶ音だ。あまり動くな。落ちるぞ?」
「・・・はい」
じっとしていると、上から大きな翼を持った生き物が悠然と降りてきた。
バッサバッサと音を立てて目の前で浮遊している。
その大きな目玉がギョロリと動き、ユリアの顔をじろじろと見る。
口の端には大きな牙がニョキっと出ていた。
――ん、これって何かしら・・・顔が怖い・・・・まさか・・・まさか、これに乗って出掛けるの?
不安定に上下するヴィーラの体。
ユリアの顔がスーッと青ざめていく。
堪らずにラヴルの肩にしがみついて、頬を胸に埋めて瞳をギュッと閉じた。
「怖いのか?大丈夫だ、ヴィーラはユリアを落としはしない」
「こ・・・怖くなんて・・・怖くなんて、ありません。ただ、びっくりしているだけです」
「そうか、怖くない、か。ならば自分で乗って貰おうかな?」
「・・・?待って・・あの・・・え―――!?」
ラヴルは楽しげな声を出し、抱き抱えていた腕をふっと緩めた。
体がスルリと離れ、僅かなスペースにすとんと下ろされるユリア。
バランスを崩した体はふわりと揺れ、柵の外の闇が近付いてくる。
あまりの恐怖に声も出ない。
―――落ちる!と思った瞬間に、ラヴルの腕が目の前に現れてがっしりと体を支えた。
それをぎゅっと掴んでしがみつく。
すると、何がおかしいのか、クスクスと笑う声が聞こえてきた。
「冗談だ。・・・ユリアは面白いな」
―――冗談って、そんな・・・ちっとも面白くない。
私は、こんなに、こんなに、怖かったのに。
涙を浮かべるユリアを見て、しっかり掴まってろ、と優しく言うと、ラヴルは震える体をしっかりと抱え込み、まるで地上にいる馬に乗るかのように、いとも簡単に、ヴィーラの背中にひらりと乗った。
「行け、ヴィーラ」
さっき味わった恐怖が消えずぎゅっと目を瞑るユリア。
暫くすると悠然と羽を動かす音が聞こえ、ふわふわとした浮遊感が体に伝わってきた。
その感覚も慣れなくて怖くて、必死にしがみついてしまう。
「ユリア、そう怖がるな。大丈夫だ、ほら、目を開けろ」
震えながらも恐る恐る目を開けてみると、眼下に光りの海が広がっていた。
それは、部屋の窓から見たあの水面で、ヴィーラが起こす風でさざ波が起こり、月明かりに照らされてキラキラと輝いていた。
ラヴルにしがみついたまま後ろを見てみると、さっきまでいた場所が見えた。
山の上に建てられているそれは、下の方にある家と比べてはるかに大きく見える。
遠くから見ても、広大な屋敷だということが分かる。
――あれは屋敷っていうよりも、別の何かだわ・・・。
あんなに大きかったの?
ラヴルって一体何者なの・・・?
ユリアは前を見据える漆黒の瞳を不思議そうに見つめた。
「これが、これから私とともに住む街だ。ユリアの物と言ってもいい。よく見ておけ」
ヴィーラが方向を変えて、後ろの景色を見せるようにその場に浮遊する。
広大な屋敷が建つ山。その裾野から海辺に向かって徐々に家の灯りが増えている。
港のような所には特に家が多いのか、灯りがひと塊りになって煌々と輝いていた。
「あの、見せたいものって、これですか?」


