魔王に甘いくちづけを【完】

瑠璃の森にいた日々を思い出す。

確か、あそこでは、一度も狼の姿を見たことがない。

一度は満月の夜を迎えてたはずなのに。

普通は、変身しないものなのかしら?

変身するのは、もしかして、バルだけ?



頭の中にハテナマークを沢山浮かべてると、向かい側のブラウンの頭の中にも、疑問符が浮かんでるようだった。

俯いてうーんと唸って何かを悩んでいる。



「ジーク?“狼の意味”のことはもういいわ」



ジークが、ぱっと顔を上げる。

少し、困ってるみたい。また頭を掻いている。



「あぁ、待て。そうはいかん。これでもリリィにも説明出来たんだ。全部分かってくれてるかは、不安だが」



渡す時に一緒にいた、周りにいた女の子たちに助けられながらも、意味を説明できたそう。

それと、同じことを言ってくれればいいんだけど・・・。

“狼”の意味を説明するのは、余程難しいみたい。



「んー、それよりもだ。・・・話を戻すぞ。その小瓶の話だ。今夜は満月だということは、知ってるな?」



“月がまんまるになります”


「はい、室長から聞いてます。今夜はまんまるになるんですよね。綺麗な夜になると聞いてます」

「うん、確かに夜景は綺麗になる。が―――その他には?・・何か聞いてるか?」



ジークは腕を組んだ姿勢でじーっとこちらを見ている。

その雰囲気が、いつもと違って見える。

周りの空気が揺らいでるというか・・・。

そう、バルが金の瞳になった時のような。

あそこまで熱くはないけど、そんな感じを受ける。



「聞いてません。けど・・・」

「けど・・・何だ?」

「・・・質問があるんです」

「?・・・何でも言ってみろ」



少し身を乗り出していた体が、背もたれにズシンと預けられた。

まるで、こうなったら何でも来い、とでも言ってるように。

私とリリィがあまりにも無知だから、呆れられてるのかもしれないけど。

以前からずっと疑問に思ってたことを聞いてみるのは、話題の出てる今しかない。



「今夜は、城中のみんなが、狼になってしまうんですか?」