「準備はいいか?」
「はい、整いまして御座います」
バルの城宮の玄関脇に集まる5人。
近衛騎士団長、騎士団員、占師サナ、ザキ、それにバル。
早朝の召集にもかかわらず、いつでも出発できるよう皆しっかりと旅支度を整えていた。
数日分の食糧、少しばかりの医薬品。それぞれの鞄の中に少しずつ詰め込まれて鞄は、パンパンに膨らんでいる。
占師サナに至っては、丸くて大きな水晶玉を布鞄に入れ込んで肩から提げているので、小さな体ではそれだけで重くて通常の鞄が持てず、皆にヘコヘコと頭を下げながらテントと一緒に馬の背に乗せていた。
だが、サナの体は水晶玉だけでもよろよろして足元がおぼつかない。
「サナ、お前は馬に乗った方がいいな」
見かねたバルがそう提案した。
サナの者は皆占術に特化した才能を持つためか、同じ狼の種族でも体が小さく見るからに弱々しい。
ザキがめんどくさげに動き、戸惑っているサナの体を馬の上に押し上げた。
「よし、行くぞ」バルが一声かけると、皆が馬と一緒に歩き出す。
荷物を乗せた馬2頭と1頭にサナを乗せ、あとの4人は徒歩。
隊列を組み、ぞろぞろと歩きだした。
危険な旅の、始まりだ――――
危険な種は旅だけでなく、バルの城宮にも潜んでいた。
バル達が旅に出る光景を、木の陰に隠れるようにして見つめる黒い影が一つ。
その影の唇の端がクイとあがり、にたりと不気味に笑う。
そして、嬉しそうに呟いた。
「よぉし・・・行ったなぁ」
この時を待っていたかのように、そのままうきうきとステップを踏むようにして城宮の敷地の中に入り込んでいく。
城の中では珍しい黒づくめの姿が、無邪気に鼻歌を歌いながら進む。
しかし見るからに妖しいそれは、当然のように玄関脇の衛兵に見咎められた。
衛兵は剣をかざしながら威嚇してくる。
「そこの黒いお前、待て!・・・ん?お前この城宮の者―――」
衛兵の口は大きな掌で阻まれる。
その後、ゴッ!・・と音を立てた。
衛兵の頭が壁に打ち付けられたのだ。
ぐったりと項垂れた頭からぽたぽたと血が滴り落ちている。
掌を衛兵の顔から離しながら影は呟く。
「・・・あぁ、残念だなぁ。お前が、素直に通さないからさぁ」
座った姿勢のまま意識のない体を見下ろし、不気味な笑みを浮かべる。
「さぁて、どこにいるかなぁ~?」
鼻をひくつかせながら、宮の中へと足を踏み入れた。
まだ、匂いはしない。
「う~ん、先ずはそうだぁ。1階からだ」
鼻と耳をピクピク動かし、きょろきょろしながら歩く姿は、その先々で衛兵やら使用人に「待て!」と見咎められる。
その度に太い腕を一振り。
鋭い爪から滴り落ちる血を、うっとおしげに振り払う。
「あ~ぁ、もう、邪魔するからさぁ・・・」
「はい、整いまして御座います」
バルの城宮の玄関脇に集まる5人。
近衛騎士団長、騎士団員、占師サナ、ザキ、それにバル。
早朝の召集にもかかわらず、いつでも出発できるよう皆しっかりと旅支度を整えていた。
数日分の食糧、少しばかりの医薬品。それぞれの鞄の中に少しずつ詰め込まれて鞄は、パンパンに膨らんでいる。
占師サナに至っては、丸くて大きな水晶玉を布鞄に入れ込んで肩から提げているので、小さな体ではそれだけで重くて通常の鞄が持てず、皆にヘコヘコと頭を下げながらテントと一緒に馬の背に乗せていた。
だが、サナの体は水晶玉だけでもよろよろして足元がおぼつかない。
「サナ、お前は馬に乗った方がいいな」
見かねたバルがそう提案した。
サナの者は皆占術に特化した才能を持つためか、同じ狼の種族でも体が小さく見るからに弱々しい。
ザキがめんどくさげに動き、戸惑っているサナの体を馬の上に押し上げた。
「よし、行くぞ」バルが一声かけると、皆が馬と一緒に歩き出す。
荷物を乗せた馬2頭と1頭にサナを乗せ、あとの4人は徒歩。
隊列を組み、ぞろぞろと歩きだした。
危険な旅の、始まりだ――――
危険な種は旅だけでなく、バルの城宮にも潜んでいた。
バル達が旅に出る光景を、木の陰に隠れるようにして見つめる黒い影が一つ。
その影の唇の端がクイとあがり、にたりと不気味に笑う。
そして、嬉しそうに呟いた。
「よぉし・・・行ったなぁ」
この時を待っていたかのように、そのままうきうきとステップを踏むようにして城宮の敷地の中に入り込んでいく。
城の中では珍しい黒づくめの姿が、無邪気に鼻歌を歌いながら進む。
しかし見るからに妖しいそれは、当然のように玄関脇の衛兵に見咎められた。
衛兵は剣をかざしながら威嚇してくる。
「そこの黒いお前、待て!・・・ん?お前この城宮の者―――」
衛兵の口は大きな掌で阻まれる。
その後、ゴッ!・・と音を立てた。
衛兵の頭が壁に打ち付けられたのだ。
ぐったりと項垂れた頭からぽたぽたと血が滴り落ちている。
掌を衛兵の顔から離しながら影は呟く。
「・・・あぁ、残念だなぁ。お前が、素直に通さないからさぁ」
座った姿勢のまま意識のない体を見下ろし、不気味な笑みを浮かべる。
「さぁて、どこにいるかなぁ~?」
鼻をひくつかせながら、宮の中へと足を踏み入れた。
まだ、匂いはしない。
「う~ん、先ずはそうだぁ。1階からだ」
鼻と耳をピクピク動かし、きょろきょろしながら歩く姿は、その先々で衛兵やら使用人に「待て!」と見咎められる。
その度に太い腕を一振り。
鋭い爪から滴り落ちる血を、うっとおしげに振り払う。
「あ~ぁ、もう、邪魔するからさぁ・・・」


