魔王に甘いくちづけを【完】

『・・・私も、会いたいと、思っている』


言葉を区切り、貴方は切なそうに囁く。



でも、会えなかったじゃない・・・

貴方は来てくれなかったわ。


勝手にいなくなった私のこと、貴方は許さないのでしょう。


見限ってしまって、すでに他の方を・・・お迎えになったのでしょう?


あの部屋には、もう、私の居場所はないのでしょう。





『ユリア、何を言っている・・・簡単に、私のモノを手放すはずないだろう。・・・ふむ、怪我はもう治ったようだな。・・・いい加減私の元に戻れ。私には貴女が必要だ』




優しい声に体中が喜びに震える。


けれど、私の聞きたい言葉じゃない。



―――必要―――



覚悟はしていたけれど、私を想ってる訳ではないと、改めて言われてしまった。

必要、という言葉に男女の愛情なんてひとかけらも感じられない。


いつか、そうでなくなるときが確実にくる。


そうなったら貴方は私を、捨てる―――




『ユリア・・・目を開けろ』



何かが髪に触れてる。


耳元でぱらぱらと髪が落ちる音がする。


夢だというのに感触に現実味があって、しかも音が近い。


髪を弄る手。

傍にいた時の感覚が蘇り、知らずに涙が溢れてくる。


体が貴方を覚えている。


その先の腕の中に入れて欲しいと、切に願ってしまう。