その日の午後、城の中のある場所から、コロコロと笑う楽しげな女性の声が響いていた。
気持のいい日差しの降り注ぐ中、それは遠く離れた中庭まで届くほどに大きくて、作業中の庭師達が嬉しげに目を細めている。
それはここ最近聞かれなかったもので、久しぶりに耳に届くそれは庭師たちにとってはとても心地よい音だった。
その発生源は、王妃の住む宮の広いテラス。
大きく放たれた両開きの窓。
風に揺れるカーテン。
籐椅子に座りににこにこと機嫌良く笑みながら、緊張気味のユリアにしきりに話しかけているのは、この国の王妃、アーシア。
色とりどりのタイルで綺麗に装飾された、職人技満載の丸いガーデンテーブルの上には、グリーンのマットが敷かれ、淡いピンク色の紅茶とフルーツがふんだんにのせられたケーキが置かれている。
少し離れた位置に侍女たちが6人ほどずらりと並び、二人の話を聞くともなく澄ました顔で立っている。
ユリアはケーキをつつきながら、王妃の話に曖昧な笑みを浮かべつつ当たり障りのない返事を繰り返していた。
さっきから、王子とは何処でお会いになりましたの?、とか、どこがお気に召したのかしら?、とか矢継ぎ早に質問されているのだ。
それはまるで若い娘が咲かせる恋話のようで、頬をほんのりと赤らめウキウキと話す様子は、とても威厳ある王妃様とは思えず、親しみさえ感じてしまう。
とても可愛らしい方だと思った。
ユリアはバルと打ち合わせておいた通りに答えているけど、この素敵な方を騙していると思うとどうにも引き攣った笑顔になり、嘘がバレてはいないかひやひやしていた。
一通りの質問が終わったのか、ホッと一息つき王妃が紅茶のカップをカチリと置いて満面の笑みをユリアに向けた。
「ねぇ、ユリアさん、こんなことを貴女に話すのはどうかと思うのですけれど。聞いて下さるかしら」
「はい。どうぞお話し下さい」
ユリアがニコリと微笑みながらそう答えると、王妃は一拍置いた後、では、お話しさせてもらうわねと、呟き早速話し始めた。
「ユリアさん、私嬉しいんですのよ。王子はあの通りでしょう?
仕事ばかりで結婚に全く興味がなくて、私が縁談を持っていっても絵姿を見もせずに断ってしまうんですの。
あの子はこの国の世継ぎですもの。
早く身を固めさせたくても、いつもいつも出掛けてばかりで、誰か心に決めた方がいるのかしらと観察していても、女性の影などチラリとも見えなくて。
もう駄目かしら、もしかしたら女性に興味がないのかしら、このまま独身をとおすならばこの次は養子を取るしかないのかしら、と諦めかけていましたの」
「・・・そうですか」
「そうですの。あの子ったら、あれでもこの国の令嬢たちに人気がありましてね。
妃候補になりたいお方は掃いて捨てるほどおりましたの。
それなのに、あの子ったら、降る様に舞い込む縁談について話そうにも、空を飛ぶ鳥のように一向に捕まえることが出来なくて」
ふぅ・・と息をつき、王妃の美しい手がテーブルの上のカップを手に取った。
気持のいい日差しの降り注ぐ中、それは遠く離れた中庭まで届くほどに大きくて、作業中の庭師達が嬉しげに目を細めている。
それはここ最近聞かれなかったもので、久しぶりに耳に届くそれは庭師たちにとってはとても心地よい音だった。
その発生源は、王妃の住む宮の広いテラス。
大きく放たれた両開きの窓。
風に揺れるカーテン。
籐椅子に座りににこにこと機嫌良く笑みながら、緊張気味のユリアにしきりに話しかけているのは、この国の王妃、アーシア。
色とりどりのタイルで綺麗に装飾された、職人技満載の丸いガーデンテーブルの上には、グリーンのマットが敷かれ、淡いピンク色の紅茶とフルーツがふんだんにのせられたケーキが置かれている。
少し離れた位置に侍女たちが6人ほどずらりと並び、二人の話を聞くともなく澄ました顔で立っている。
ユリアはケーキをつつきながら、王妃の話に曖昧な笑みを浮かべつつ当たり障りのない返事を繰り返していた。
さっきから、王子とは何処でお会いになりましたの?、とか、どこがお気に召したのかしら?、とか矢継ぎ早に質問されているのだ。
それはまるで若い娘が咲かせる恋話のようで、頬をほんのりと赤らめウキウキと話す様子は、とても威厳ある王妃様とは思えず、親しみさえ感じてしまう。
とても可愛らしい方だと思った。
ユリアはバルと打ち合わせておいた通りに答えているけど、この素敵な方を騙していると思うとどうにも引き攣った笑顔になり、嘘がバレてはいないかひやひやしていた。
一通りの質問が終わったのか、ホッと一息つき王妃が紅茶のカップをカチリと置いて満面の笑みをユリアに向けた。
「ねぇ、ユリアさん、こんなことを貴女に話すのはどうかと思うのですけれど。聞いて下さるかしら」
「はい。どうぞお話し下さい」
ユリアがニコリと微笑みながらそう答えると、王妃は一拍置いた後、では、お話しさせてもらうわねと、呟き早速話し始めた。
「ユリアさん、私嬉しいんですのよ。王子はあの通りでしょう?
仕事ばかりで結婚に全く興味がなくて、私が縁談を持っていっても絵姿を見もせずに断ってしまうんですの。
あの子はこの国の世継ぎですもの。
早く身を固めさせたくても、いつもいつも出掛けてばかりで、誰か心に決めた方がいるのかしらと観察していても、女性の影などチラリとも見えなくて。
もう駄目かしら、もしかしたら女性に興味がないのかしら、このまま独身をとおすならばこの次は養子を取るしかないのかしら、と諦めかけていましたの」
「・・・そうですか」
「そうですの。あの子ったら、あれでもこの国の令嬢たちに人気がありましてね。
妃候補になりたいお方は掃いて捨てるほどおりましたの。
それなのに、あの子ったら、降る様に舞い込む縁談について話そうにも、空を飛ぶ鳥のように一向に捕まえることが出来なくて」
ふぅ・・と息をつき、王妃の美しい手がテーブルの上のカップを手に取った。


