何かと気にしてくれてることに、感謝しなければいけない。
私は世話になってる身なのだから、文句を言ったら罰が当たってしまうわ。
元気になったら、何かお返ししなくちゃね。
「バル、いつもありがとう」
改めてお礼をいうと、照れたように唸り声をあげた。
部屋を見廻してみる。
こうして座ると景色が違って見え、新鮮な気分になる。
―――不思議ね、ずっとここにいるのに、まるで初めての場所に来たみたい。
視点が変わるだけで違った部屋に見える。
隣にある窓の外を見れば、今まで見ていた木の葉と空だけの世界に地面と花が加わり、映る景色が一気に華やかになった。
少し先の木の根元に、楽器のような形をしたピンク色の花がたくさん咲いているのが見える。
その先にも点々と白や黄色の花が群生している。
―――綺麗な森・・・外界から遮断されたような空間。
澄んだ空気に甘い風。
この香りは、きっとあのピンクの花から漂ってくるのね。
眺めていると、ザキとリリィの姿が見えた。
道の向こうから不機嫌そうに話すザキと薬草の入った籠を持って屈託なく笑うリリィが、仲良くこちらに歩いてくる。
最近リリィはザキと仲が良いようで、「ザキがいろんなこと教えてくれるの」と、仕入れた情報をよく話してくれる。
この間はこの森のことを言ってたっけ。
確か、瑠璃の泉の力が外側からの魔力を遮断するとかなんとか。
だからここは隠れ住むのに最適な場所だって言ってた。
ということは、ここにいる人たちは―――
「何を見てるんだ?」
不意に掛けられた声と、目の前に現れた腕によって思考が停止された。
バルの両腕が頭を挟むようにして伸び、窓の桟に掴まっている。
腕の中に閉じ込められた形になり、バルの体が上に覆いかぶさっている。
すぐ脇にバルの逞しい胸があり、少し動けば頬が触れてしまいそう。
息遣いまでも聞こえてきそうな状態。
ラヴル以外の男性にここまで近付かれたことがなく、どうにも居心地が悪い。
治療をしてくれたジークでさえも、ここまでは近付かなかった。
「ん?あれは、ザキとリリィか・・・あいつら、いつのまに・・・そうか・・・」
バルが意外そうにボソと呟いた。
その静かな低い声が、ラヴルの声と少し似ていてドキドキしてしまう。
逃れたくて動こうにも、自力ではまだ難しい上に、却ってバルの腕とか胸に触れてしまいそうになる。
それは避けたい。
リリィとザキは家の中に入ったのか、声も聞こえてこない。
でも、バルは覆いかぶさったまま動こうとしない。
目の前にある逞しい腕をじっと見つめる。
―――いつまでこのままなのかしら。
随分長い間この体勢でいるように思うし、さっきよりも腕の間が狭まってるように感じる。
気のせいかしら・・・でも・・・。
見てると、じり・・・と腕が近づいた気がした。
―――え・・・?
私は世話になってる身なのだから、文句を言ったら罰が当たってしまうわ。
元気になったら、何かお返ししなくちゃね。
「バル、いつもありがとう」
改めてお礼をいうと、照れたように唸り声をあげた。
部屋を見廻してみる。
こうして座ると景色が違って見え、新鮮な気分になる。
―――不思議ね、ずっとここにいるのに、まるで初めての場所に来たみたい。
視点が変わるだけで違った部屋に見える。
隣にある窓の外を見れば、今まで見ていた木の葉と空だけの世界に地面と花が加わり、映る景色が一気に華やかになった。
少し先の木の根元に、楽器のような形をしたピンク色の花がたくさん咲いているのが見える。
その先にも点々と白や黄色の花が群生している。
―――綺麗な森・・・外界から遮断されたような空間。
澄んだ空気に甘い風。
この香りは、きっとあのピンクの花から漂ってくるのね。
眺めていると、ザキとリリィの姿が見えた。
道の向こうから不機嫌そうに話すザキと薬草の入った籠を持って屈託なく笑うリリィが、仲良くこちらに歩いてくる。
最近リリィはザキと仲が良いようで、「ザキがいろんなこと教えてくれるの」と、仕入れた情報をよく話してくれる。
この間はこの森のことを言ってたっけ。
確か、瑠璃の泉の力が外側からの魔力を遮断するとかなんとか。
だからここは隠れ住むのに最適な場所だって言ってた。
ということは、ここにいる人たちは―――
「何を見てるんだ?」
不意に掛けられた声と、目の前に現れた腕によって思考が停止された。
バルの両腕が頭を挟むようにして伸び、窓の桟に掴まっている。
腕の中に閉じ込められた形になり、バルの体が上に覆いかぶさっている。
すぐ脇にバルの逞しい胸があり、少し動けば頬が触れてしまいそう。
息遣いまでも聞こえてきそうな状態。
ラヴル以外の男性にここまで近付かれたことがなく、どうにも居心地が悪い。
治療をしてくれたジークでさえも、ここまでは近付かなかった。
「ん?あれは、ザキとリリィか・・・あいつら、いつのまに・・・そうか・・・」
バルが意外そうにボソと呟いた。
その静かな低い声が、ラヴルの声と少し似ていてドキドキしてしまう。
逃れたくて動こうにも、自力ではまだ難しい上に、却ってバルの腕とか胸に触れてしまいそうになる。
それは避けたい。
リリィとザキは家の中に入ったのか、声も聞こえてこない。
でも、バルは覆いかぶさったまま動こうとしない。
目の前にある逞しい腕をじっと見つめる。
―――いつまでこのままなのかしら。
随分長い間この体勢でいるように思うし、さっきよりも腕の間が狭まってるように感じる。
気のせいかしら・・・でも・・・。
見てると、じり・・・と腕が近づいた気がした。
―――え・・・?


