魔王に甘いくちづけを【完】

「聞きたいことは二つあるんだ。今を逃すと、この先一生聞けない気がする。嫌なら答えなくてもいいが、出来れば教えて欲しい」


「・・・何ですか?」


真剣なバルの声。それに圧されて、出した声が少し震えてしまった。



―――何を聞きたいのかしら。もしかして、この怪我の理由?

だったら私よりもリリィに聞いた方がよく分かるはずだわ。

リリィがここに連れてきてくれたのだから―――


「―――バル?」


名前を呼びつつ金色に光る瞳を見る。

それはユリアではなく、どこか別のところを見ているよう。

聞きたいって言ったのにずっと黙ったままで。

何だか少し怖い。


バルは組み合わせた手を口元につけたまま少し躊躇した後、遠慮がちにもはっきりと声を出した。




「――――いくらだ」

「はい?」

「・・・彼は―――――ラヴル・ヴェスタは、いくら出した」

「・・・もしかして、オークション、ですか?」

「そうだ」

「・・あ・・・何でそんなことを聞くの?というか、バルは、ラヴルを知ってるの?」



まるでラヴルを知っているような口ぶりに疑問をもち問いかけると、バルは組み合わせた手を下ろし、伏せがちだった顔を上げた。

金色に光る瞳が睨むようにしてユリアを見る。

ふざけや蔑みの色は全く感じられない。

ただただ真っ直ぐに見つめてくるその怖いほどの真摯な色に、ますます戸惑いを感じてしまう。



―――私の値段・・・私の価値。

本人が言うとおり、とても失礼なことをバルは聞いてる。

軽々しく口外するようなことではないと思う。

そんなこと、出来れば答えたくない。

バルはそれを知ってどうするの――――?



嫌な気持ちになり、バルから目をそむけるユリア。

そんな様子を見てとり、心の声を嗅ぎ取ったかのようにバルは声を強めゆっくりと発声した。



「嫌な気分にさせてすまない――――俺は、彼を知ってる。彼も、俺を知っているはずだ―――――最初に言っただろう、失礼なのは分かってると。俺は興味本位で聞いているわけじゃない。それだけは分かって欲しい」



そう言って身を乗り出すようにして覗きこんで来る。

その真剣な表情は同じなままで、一度も崩さない。

何か理由があるんだろうけど・・・。



「頼む、教えてくれないか。彼は、お前を、いくらで手に入れた」