魔王に甘いくちづけを【完】

艶々と血色のいい肌で、可愛らしくにこっと笑って頭を下げた姿を思い出す。

でも、今目の前にあるのは、青ざめた頬に固く結ばれた唇。

それがプルプルと震え始めた。

それはまるで息を止めてるかのように見える。


じっと見つめていると、ふぅと大きく息を吐きながらカクンと項垂れて、ベッドの上に乗せていた自らの両腕の中に顔を埋めた。

握っていた手の力がみるみる緩んでいき、脱力したような声を出した。



「あぁ良かったぁ・・・やっと起きた・・・」

「あの・・・大丈夫?」


そう問いかけると、埋めていた顔をガバッと起こし、ずいっと近寄った。


「・・・っ、それは私のセリフだわ。ねぇ、ユリアさん。私リリィよ。小島で会ったの、覚えてる?」


「えぇ・・リリィ、よね。もちろん、覚えてるわ。あの・・リリィが私を助けてくれたのよね?ありがとう」


「――――うぅん、ごめんなさい。こんなに怪我をさせちゃって、すごく痛いでしょ?私の力が足りないせいで・・・それに、こんな遠いところに来ちゃって・・・すぐに帰れなくて・・・」



後半は涙声になり辛そうに顔を歪めるリリィ。

大きな瞳からは今にも雫が零れそう。

握られてない方の手をゆっくりと上げてリリィの頬にそっと触れた。



―――優しい子。・・・きっと、小さな心をずっと痛めていたんだわ―――


「泣かないで。怪我のことは気にしないで・・・ね?」

「・・・ありがとう・・・。ユリアさん、あのね、さっきからずっとうなされていたの。きっと怖い夢見てるんだろうと思って。だから起こそうと思って何度も呼んでいたの。ジークさんは大丈夫だ、寝かせとけって言ったんだけど・・・」


涙を拭きチラッと後ろを振り返ったあと、再び心配そうに見ろした。

その横から「全く、リリィは泣き虫だな?」と言いながら、ブラウンの髪の男性が現れた。

それはここに来て一番最初に見たのと同じ顔で。


・・・そっか、この方がきっと、ジークさんね。


大きな掌がおりてきて額の布を取ってヒタヒタと触れる。



「うん、熱はもう下がったな。気分はどうだ?」


「はい、随分良くなりました」


「そりゃ良かった。前に比べて、声にも張りが出てきたな。よし、これを飲め。薬だ」


細い管が唇を割り苦い液体が流れ込んでくる。


あまりの苦さに顔をしかめると、いい傾向だ、と呟いてニコリと笑った。


その笑顔が離れていくと、入れ替わるようにして別の顔が覗き込み、大丈夫か?と聞いてきた。