母が泣いていた。


まだ幼い私には理解が出来なかった。


「まま?」


泣いている母にそっと寄り添った。


割れているグラス、


散乱している本、


母は小さな肩を震わせながら私に言った。


「ままね、今からお仕事にいってくるの、
大切なの。お留守番できる?」


私は黙って頷いた。


子供ながらも、様子のおかしさには


気付いていた。