「拓也っ♥おはよぉ~♥♥」
「ん。おはよ。」
昨日の出来事がまるで嘘かのように
拓也はいつも通りだった。
当たり前か・・・。
拓也はあたしの事嫌いなんだもんね。
どんっ
「きゃあっ!?」
「あ、ごっめぇん聖羅ちゃん。ぶつかっちゃったぁ。でもわざとじゃないからね?(笑)」
「真理ちゃん、今の絶対わざとでしょぉ?(笑)」
「えぇ~、そんなことないってぇ。」
最悪・・・。
なんであたしばっかこんな目に遭うの?
あたしはスカートのホコリをはらいながら立ちあがると
まただれかとぶつかった。
「痛っ」
「邪魔なんだけど。ってか、こんくらいで痛いとか、大袈裟なんだよ。」
「あ・・・」
拓也・・・。
喉まで出た言葉を胸にしまいこんだ。
今日はなんか、いつも以上に冷たいな。
「やだぁ、拓也!それはさすがにかわいそぉだってぇ!(笑)“一応”彼女なんだからさぁ!!」
「よっ!“名ばかりの恋人”っ!!(笑)」
クラスのみんなが一斉に笑う。
拓也は無表情だった。
あたしは、涙が溢れそうなのをこらえていた。
「まぁ、一応付き合ってるし、キスくらいしといてやるかな。」
え・・・?
あたしは驚いて顔をあげた。
縋るように拓也を見た。
お願い、やめて・・・っ!!
「や・・・」
「いいねぇいいねぇ!“名ばかりの恋人”のキスシーン!」
「ちょっと拓也ぁ・・・っ!!」
みんなの声を無視して、あたしに顔を近づけてくる拓也。
やだっ!
拓也・・・っ!やめて!
「聖羅、顔上げろ。」
「~~~っ!!」
今にも泣きそうだった。
嫌なのに・・・っ!
こんなキス、したくない。
「聖羅。」
一瞬で身体がこわばる。
拓也は怒るとものすごく怖い。
あたしが前に見たときは
男の人を思いっきり殴っていた。
男の人の顔は歪んで
拓也は停学。
その後、なんとか退学にはならずにすんだけど
あたしはあの日見た拓也の顔が忘れられない。
今、拓也はあの日の顔をあたしに向けていた。

