「聖羅、したい。」

「な・・・っ!?」

「ダメ・・・?」

「き、今日はもう帰るっ!」

あたしは一刻も早くこの場を離れたくて、荷物を持って立ち上がった。

「嫌だ。今日は帰さない。」

拓也があたしの腕を掴む。
そんなこと言わないでよ。
優しくしないで。
他の子ともエッチな事してるんでしょ?
あたしの知らない顔して
女の子を抱いてるんでしょ?

「け、警察に訴えるよ!?」

「・・・・・。」

拓也は一瞬迷ったけど、すぐにあたしの腕を離し、不満そうな顔で「送る。」と言った。


拓也・・・。
どうしよう。
そんなに優しくされたら、あたし・・・。

「ほら、行くぞ。」

「うん。」

拓也があたしの手を握り、歩き出す。
拓也と手つないだの、久しぶりだなぁ。
あたし達が付き合い始めてすぐの頃は、手をつなぐなんて当たり前だったのに。

「送ってくれてありがとう。」

「ん。んじゃな。」

「うん。おやすみ。」

「聖羅・・・」

「え?んんっ!?」

あたしは、唇に感じたわずかな温もりに
思わず涙がこぼれそうになるのを
ただ、必死にこらえていた。

「おやすみ。」

拓也・・・。
大好きです。
拓也が大好きなの・・・。

「拓也・・・。」

小さくなっていく拓也の背中を見つめながら
そっと彼の名前を呼んだ。


愛してるわ。