「あれ・・・?」

いつも通る帰り道に、拓也が1人で座っていた。
何してるんだろ?
真理ちゃんと遊んでるんじゃ・・・。

あ、そっか。
真理ちゃんを待ってるんだ。

声、掛けよっかな・・・。
いいや。やめておこう。
声掛けても、返ってくる返事は大体想像がつく。
それに、あたしなんかに声を掛けられても迷惑なだけだろう。

あたしは一言も声をかけずにその場を通り過ぎようとした。


したんだけど・・・

「何通り過ぎようとしてんの?」

「・・・っ!?」

拓也に後ろから腕を掴まれた。
びっくりしてしまって声も出ない。
あたし、なんで拓也に声掛けられたんだろぉ?

「ん~、聖羅、いい臭いするぅ♪」

あぁ、そういう事か。
拓也からほんの少し香るお酒の臭いで、あたしは納得してしまった。
拓也は、お酒にすごく弱い。
ほんの少し飲んだだけですぐ酔ってしまう。
高校生でお酒を飲むのは法律違反なんだけどね。

「拓也?」

「聖羅、今から家おいで?」

「何時だと思ってるの・・・?」

「いいからいいからぁ♥」

お酒を飲んでいる拓也は苦手だ。
自分がコントロールできなくなる。
ついつい、日ごろの行いを許してしまいそうになる。


強引に連れてこられた拓也の家。

拓也は、親の仕事の都合で1人暮らしをしている。
だからいつでも女の子を連れ込み放題なのだ。

「ん~、聖羅ぁ。」

「・・・。」

「聖羅、だぁい好き♥」

「・・・っ///」

拓也は、お酒を飲むとあたしに優しくなる。
普段は絶対に言わないような事言ったり。

そんな拓也と一緒にいると、幸せだった頃を思い出す。