彼は、私にニコリと微笑むと手を合わせた。




「ゴメン」といいながら。




すると、遅れてメールが届いた。


きっと、私が電話して切った後に送ったもの。




なんでも雨の影響で、空港に予定通り着陸出来なかったと言うのだ。



機長に頼み込んで、ギリギリのギリギリまで粘ったんだって。


粘らなきゃ、東京の空港じゃなくて、千歳で着陸になっていたんだって。



すべて細かく書かれていた。




私は、ガラスの向こうにいる彼に頷いた。



もう分かったよ。って。




すると彼は、左手の人差し指を、ガラスにくっつける。


そして、何かを書き始めた。



私は結露をふき取って、彼の鏡文字を読み取ろうとするが、強い雨で文字としては成り立っていない。



でも一生懸命な彼の姿に、私は必死に言葉を読み取ろうとする。




たとえ、それが
別れの言葉であっても。




私は読み取ろうと、目を見開いた。



『で』


『あ』