聞こえても意味が無いから、音があっても意味が無いから、携帯はいつもサイレントモードだった。
メールだけ、バイブ設定で。
電話なんて、使わないから。
...使えないから。
なのに、携帯が鳴っている。
かすかだけど、私にも届いてる。
ってことは、かなりデカイ音。
携帯を手にとって窓を見ると、彼は私を見ていた。
窓に張り付いて、私を見ている。
髪も服も、私以上にビチョビチョで。
携帯の着信が切れると、途端に私の涙は最高潮を迎える。
「ウッ......」
涙を零しながら、自分で書いた『スキ』の文字に気づき、消そうとする。
こんなの、迷惑なだけなハズだから。
すると彼は、拳で軽くガラスを叩いて、首を振った。
「消すなよ」
唇がそう動いていた。

