家に帰る気も起きなくて、小さな喫茶店に足を運んだ。



深夜のみの営業らしい喫茶店。



ズブ濡れの私を見ても何も言わず、マスターのおじさんはニコリと笑うだけだった。




道路が見える、窓際の席。



期待したって、しょうがないのに。




ガラスの結露を左手で拭って、外を見る。


マスターは知らぬ間に、暖かいホットミルクを置いてくれていた。



私は携帯を握り締めながら、新着メール問い合わせボタンを押し続ける。



そのたびに出る『新着メールはありません』の文字。



携帯をついには閉じると、私は遠くから走ってくる人を見つめた。



走ってくる人も、誰かを待たせているのだろうか?


それとも、待っているのだろうか?


探しているのだろうか?




「!!!!!!!!!!」





そんなことをぼんやり考えていた時だった。


喫茶店の前に、彼はいた。



こっちに背を向けていて、気づいていない。




私は携帯を開き、彼に電話をかけた。