「ってか、部屋隣なんですよね」
「えっ?」
「いや、変な意味じゃないですよ?」
いきなりの敬語口調に驚いてしまった。
さっきは、タメだったのに。
「敬語じゃなくていいです」
「えっ?分かるの?」
「唇の動きでなんとなく...敬語だろうな...って」
『すげー』と声を漏らす彼。
ワザとなのかな?
ゆっくり唇を動かしてるのは。
「今、なんて言ったでしょう?」
「すげー?」
「おぉ、正解。」
彼は指をパチンと鳴らすと、私の鞄を持ち上げた。
指の音は、もちろん私には届いていないのだけど。
「鞄...」
「隣だし、部屋の前まで持ってってやるよ。
その、書類を大事そうに抱えてるし」

