それから十五分くらいして、彼は戻ってきた。
「ほら、部屋の鍵」
「えっ.....」
「名前が違う人だったから、手続きが大変だった」
笑いながら言う彼。
やっぱりこの人から、嫌味は感じない。
「本当にありがとう。
なんで、こんな他人のために?」
「他人...じゃないだろう?」
「えっ?」
“他人”
顔見知りって言葉もあるけれど、私たちにはそれがピッタリなはずだ。
「俺的には
一緒の時、同じ空にいたら
もう、その人とは他人じゃない」
「.......」
「まぁ、くさい台詞だけどな」
二回目の、照れた笑い。
何で簡単に、そんな事言えるの?
“他人”じゃない。
なんて....ハッキリと。

