連絡の確認をもう一度しようと鞄から携帯を取り出そうとした小都音は、ふと動作を止めた。


「…遅い。」

小都音は独り言のように小さく呟いた。


見ると、前方から例の友人が前髪を手で当てながら、小走りでやって来る。

小都音が彼女に気付いたのは、
正しく嗅覚で判断したのだ。


小都音の友人こと織部ツグミは、香水を付けたくるのが趣味なのか、
彼女をよく知っている人物なら、遠くに居ても彼女が居るか否かは匂いで分かる。

花粉症の酷い人間なら彼女に近寄る事ができず、
それによって織部ツグミの交際範囲は大分狭くなってしまう。


運良く小都音の家系は代々花粉症とは無縁で、
今もこうやって香水女と交友関係を続ける事が出来たのだ。