俺は忘れ物をして一度折り返したにも関わらず、朝テストには間に合い『ゴリヘン』の英単語のテストを受けることができた。


『ゴリヘン』とは我らが2年5ホームの主任、剛力久美子のことだ。

「剛力」からとった『ゴリ』と、授業中たまに見せる「メルヘン」な一面の『ヘン』とでゴリヘンと呼ばれるようになった。

飽くまでも生徒たちのスラングとしてだが。




8時30分。
他校より少し早い一時限目がスタートした。

この日、俺は妙な事件に首を突っ込むことになるのだが、そんなこととはつゆ知らず、また退屈な、何の甲斐のない一日が始まったと教卓の真っ正面で大きな欠伸をしていた。

ノートを開くと隙間にはバスケのことが書かれている。

選手名。
フォーメーション。
チーム名。
各チームの特色。

ほんの2ヶ月前までこんなことを書いていたのだが、今では後悔している。

本当にイヤになる……。