冷汗三斗の俺の姿を、俺はあまりにも客観的に見ていた。


なぜだ。俺は何をこんなに恐れてる、焦ってる?
何に気づいた?

一瞬のことすぎて俺は自分の無意識の内の思考について行けていなかった。

「母さん……」

そう言ったつもりだったが、口が動いただけだっただろうか、はたまた水を流す音にかき消されたのだろうか。
それは定かではないが俺の言葉は母さんに届いていないようだった。


まぁいいや……。

そもそも、その署名活動について俺は知らない体なのだから、それについて訪ねるのは不自然なことだ。


俺は一言、今度はしっかり
「風呂に入ってくる」
と言ってリビングを出た。