｢あいつがサボりねぇ……｣
慶太が腕を組んで俯いた。

確かに、あの真面目な吉井がサボるなんてことは考えにくい。
しかし、最も事件性が無く、学生の気まぐれで片の付く平和な説だと俺は思っている。


｢サボるにしても、学校には風邪だとか適当に嘘吹くだろふつう｣

声を大にするのは瑠唯だった。


俺は説明を始めた。
｢あいつはきっと、親より先に家を出たんだ｣



｢そして、それから間もなく吉井の母ちゃんが署名の為に出かけた、と｣
光希が続けた。


あぁ、と俺は光希を一瞥して再び説明を始めた。


｢この時、既に吉井の頭にはサボるという選択肢が生まれていたんだろう｣


みんなの視線が俺に集まるのを体全体で感じていた。