玄関先ですまそうとしたのに、あろう事か!上がり出した。


『今日誰も居ないよ』

『うん』

『何しに来たん?』

『遊びに来た』
と言うと
『さっきお風呂入ってたでしょ?上がるの待ってたんやで!』


(待たなくていいから!帰らないか?普通?)

私のアパートは共用部分に面してお風呂の窓があった。明かりが着いていてわかったのだろう。

私には返す言葉が見つからなかった。



あーなんて無邪気な大学生とは、もちろん思わなかった。


次の瞬間

『ビールある?貰える?』
『はーい!かしこまりました。他ご注文はございましたでしょうか?』

なんて事にはならないが


馬鹿な私は

冷蔵庫からビールを出し、渡辺くんに差し出した。


この日を境に、私と渡辺くんの二時間ドラマのような時間が始まった。