pm.21:06

妹は携帯と睨めっ子。

母は後片付け。

僕は、親父とテレビを見ている。

その時、携帯が震えた。

新着メール1件。

受信ボックスのフォルダ名。


大切な人。


『今、バイト終わった。』

それに、すぐ返事をする。

『今?駅前だけど…。』

迎えに行く。と返事をして、頼む。と、そっけない返事が来た。

車を使う。と親の目は見なかったが、母は、寝てないんでしょ?気をつけて。と言い、親父は僕を睨む様に、飛ばすなよ。と言い、任せろ。と返事をし、家を出た。

pm.21:09

あの日に貰ったCDケースを手に、車のエンジンをかける。

運転は久しぶりで、実は物凄く不安だった。

小さい車だが、いろんな思い出が詰まった箱。

だから、案外お気に入り。

車が、勝手に動き始める。

つい、この間まで、片手でCDを楽々セットできたはずなのに、今は、久しぶりという事もあり、動き出した車を止め、CDをセットすることにした。

ギアが上がるにつれ、エンジン音に不安。

メーターを見ると、まだ、四十キロも出ていないのに。

その不安を消すために、持ってきたCDの音量を、結構上げた。

pm.21:27

『今どこ?』

それだけ書かれたメールに、赤信号の時、返事を送る。

僕に、迷惑をかけないように。と思ったのだろう、そっちに歩いて行くよ?との返事。

心配だから動くな。とだけ言って、青信号を追い越す。

地元から駅まで、夜は車で三十分くらい。

少しの速度違反をしながらでも、このくらいの時間がかかる。

pm.21:32

着いた。と電話をした。

駐車場に上手く止めれなかった為、急いで来て欲しい。と付け足す。

久しぶりの対面。と言う事もあり、緊張していた。と思う。

バックミラーで、笑顔の練習をしてるくらいだから。

何て話しかければいいのだろう。など思っていると、助手席のドアが静かに開いた。

「久しぶり…。」

それだけしか、言えなかった。

ただ、思っていた以上に、切ない顔をしている、あいがいた。