pm.13:15

「格好良くしてください。」

笑いながら、

「任せろ。髪は格好良くしてやる。あとは、顔でカバーしてくれよ?」

と、その笑いにツラれ、はーい。と言った。

僕が普段は目にしない雑誌を広げ、おやっさんは指を指し、こんな感じでいい?みたいに聞いてくる。

伸びている髪は、あまり切りたくなかったのだが、襟足だけは短くしたくない。とだけ言い、おやっさんの仕事が始まった。

pm.13:52

「セットはするかい?」

鏡の中に映った、少しだけ格好良くなった僕に、おやっさんは話しかける。

「格好良くしてください。」

お決まりの台詞になった言葉に、おやっさんは、はいはい。と言う顔で、青林檎の香りがするワックスで、僕の髪を立ててくれた。

また、帰ってきたら立ち寄ります。と言い残し、ありがとう。の言葉と同時に、カラン、コロン。の鈴の音を響かせ、蒸し暑い外を歩き始める。

髪を切っている最中、右太腿に感じた振動を確かめる為に、携帯を取り出す。

新着メール1件。

不在着信1件。

どちらとも、同じ人からの連絡が入っていた。

直ぐ様、その人に電話をかける。

耳に当てた受話器の向こうから聞こえる、最近の音楽。

全部を聞きたい。と思った瞬間、その思いも一瞬で断ち切られた。

「もしもーし。」

聞き覚えのある声が、頭に響く。

「どこにいるの?待ち合わせしよう?」

と言われ、久々の街中を散歩しながら、指定された待ち合わせ場所へ向かう。

何も変わらないなぁ。など思いつつ、迷子のように、街中をキョロキョロした。

pm.14:03

「ゴメン。髪切るの新人が担当でさ…。」

少し実際とは違う言い訳をしつつ、手を合わせながら、その人に謝る。

キャバクラで働いているその子は、僕より背が高い。

しかも、ハイヒールのせいか、目に見えて背が高く見え、悔しい。

「何か、ご馳走してくれたら許す。」

と言われて、有名なハンバーガーショップへ連れられる。

「久しぶり。」

「そうだね。」

みたいな普通の会話を、マヨネーズを口に付けながら、話したり、笑ったりした。

午後四時に、他の人との約束があったのだが、その人は用事が出来たらしく、その日は会えなくなり、明日会う事になった。

また、口に付いたマヨネーズを拭き取り、その人とカラオケに行き、買い物に付き合わされ、何故か、可愛らしい時計。を買わされていた。