コンビニへ入り、あいはトイレへ、僕は立ち読み。

いらっしゃいませ。と次々に言う店員を無視して、あいが出てくるのを待つ。

狭い。と教えている扉が開く。

「何か買いな?」

また、うん。とだけ言い、飲み物を見て回る、あい。

アイスを見たりもする。

昔と同じ様に、ピッタリくっついて店内を歩く。

ほんの数秒の間に、あいが、僕を軽く突き飛ばした。

改めて実感する現実。

商品を決め、あいが、レジへ飲み物を持って行く。

「152円になります。」

若そうな男の店員は、手際良く袋に商品を詰める。

去り気なくサイフを取りだし、お金を出した。

「いいのに。」

一人暮らしをしているせいで、お金は全く無いが、男は、カッコつけてこそ男。

そのプライドだけは、譲れない。

「ゆうくんは?」

欲しい物、無いから。と言ったのだが、正直、お金が無かったため。

自動ドアが開き、ありがとうございました。を無視しながら、車に乗り込む。

バタン、バタン。と勢い良く、ドアが二つ閉まる。

一度バックさせ、また車を走らせた。

「あの歌、聞いた?」

帰ってくる前に、一度メールで、聞いてほしい歌がある。と言っていた。

「買ったし。」

恥ずかしさより、嬉しさが勝り、CDを取り出そうとすると、今聴くの?と言われ、手を戻す。

am.22:36

やっとの末、辿り着いた、海が見える場所。

あいと、車を降りて、その海を見たことはなかったが、皮肉にも、その駐車場は、昔、あいとベタベタした所だった。

そんなことも忘れていると思う、あい。

着いたと言うのに、あいは携帯に夢中。

何も言えないことから、態度で表すが、やはり、昔と違うことに気付かされる。

そそくさと、歩き始めるが、追っかけて来る様子も無く、ひたすら携帯を見つめながら歩いて来る。

今日は、まだ、一度も目が合ってない。とか、小さな事を気にした。

一人だけ先に、海が見える場所に辿り着いたが、あいに何かあったら。と不安になり、来た道を少し戻り、煙草に火をつける。

やっと来たか。と思えば、あいは携帯を、まだ、握り締めたまま。

心配して、損した気分になったにも関わらず、

「歩くの早くなったね。」

あいが、変わったんじゃない?とか、喉まで、嫌味の言葉が出て来たが、

「携帯にヤキモチ。」

それだけしか、言わなかった。

いや。

僕は元カレなんだから、それだけしか言えなかった。